謎の魅力
「ぁ~、疲れた」
寮の部屋にたどり着いたベッドに倒れ込む。
あれから休んだりご飯を食べたりで魔力が回復してはいるものの、一度体に出た疲労感そのものは残ってしまっている。
しかし魔力の鍛え方か。教えてもらえるとはいったものの体力とちがって想像がつかない。
「お風呂入りたい……けど遭遇もしたくない」
今後もこういう疲れが増えてくるとしたら、どこかで諦めないといけないのかな。
でも、やっぱり女の子の体を見てしまうというのは罪悪感がある。
風呂はその中では比較的、ある程度まで避けられるのだから努力するべきだと思う。
ただ、今日は疲れが酷くてすぐに入ってご飯も食べずに寝てしまいたい気持ちだ。
直接的でないから肉体疲労ともいいがたいから、どうすればいいんだろうか。
駄目だ。疲れて頭が回らない。
ボクはそのまま欲に負けて眠りについた。
次に目覚めると夜が更けていた。
今どのくらいになるんだろう。
そう思いながら廊下にいくとまだちらほら話してる人も見えるから、よほどの夜更けではなさそうだ。
ただ身なりを見るにお風呂とかは済ませていそうだし、夕飯の時間は過ぎたかな。
「…………大丈夫かな?」
ボクは寝起きでぼやけた思考のまま、湯浴みの準備を済ませてお風呂に向かった。
流石に体を洗う頃には目も覚めてきて、少し寝たからか体の脱力感はマシになっていた。
そして湯船につかる。
「こんばんは」
「ひぁっ!?」
「なんでそんなに驚くの?」
「い、いや……」
そしていつもどおりイオさんがいた。
でも、正直な話で言えば細かい時間がわかってなかったから、気が抜けてたのもあってまさかいると思ってなくて驚いてしまったけど――すごい声でたな。
「ちょ、ちょっと、気が抜けてて」
「気を張り続けてるよりはいいと思う」
「そ、そう……」
「うん」
彼女の方は極力見ないようにしつつ話を続ける。視線は感じるけど、もう彼女のものについては諦めた。
それに彼女からしたら女性同士で見てるだけだし……女性同士でもおかしくはある気がするが。
「そういえば、イオさんのほうは魔法とか実技の何かは始まった?」
「今日から魔法が始まった」
「へぇ……ちなみに得意なの?」
「身体能力を活かすことと比べたら魔法のほうが得意」
「ふぅん」
「あなたは?」
「ボクは……初心者もいいところかな」
「魔力は多いの?」
「少ないけど質がいいとは言われてるけど、あんまりわかってない」
「それなら、疲れたでしょ」
「うん」
「いつもより遅かったから」
「うん……うん?」
なんか今会話がおかしかったような。
「どうかした?」
声のトーンが「何を不思議がっているの?」といった感じだけど、ボクからしたらそれはこちらが聞きたいというか。
「もしかしてお風呂でずっと待ってたの?」
「そうだけど」
「……いや、そこまで? ボクにそこまでの――」
「そんなことない」
食い気味に否定された。
「そ、そう」
「あなたはキレイ。それは性別関係なく魅了する。普段は制服という全員が同じものを着ているから隠されているだけ」
「え、えっと、そうなんだ」
「だから、お風呂で待ってた。今日は満足。あとでお礼に魔法についてなら教えてあげる」
「う、うん」
「それじゃあ」
お風呂から出ていく彼女の背中は、いつもと比べるとたしかに赤くなっていて長風呂したような雰囲気があった。
う、後ろ姿はセーフだよね?
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