魔法基礎2
「これがわたくしの『エネルギー・バレット』ですわ!!」
声を響かせアミリアさんの手から放たれた魔弾は見事に人形の横を通り過ぎて訓練場の壁にぶつかり衝撃で砂煙があがる。
「威力はすごい」
「だね」
ボクとオリエさんはそれぞれに思ったことを口に出した。
煙が晴れた壁をみると微妙に焦げ付いてるのがわかる。まあ、他にも壁には多く跡が残っているのを見ると同じような人が今までもいたんだろうなと感じた。
「では次はノアさんですわ」
「どうぞ」
人形の前を明け渡されて立ってみる。
ただ、やり方は知識的に知っているけど実戦は初めてなんだよね。
「えっと……どうやればいいの?」
「私達が作っていたあれを手のひらの上で作るイメージでいいと思う。魔力は感じれる?」
「一応は」
まだバランスとかは苦手だけど。
「最初は目を閉じてやってみてもいいかも。変に目に見えてる形に囚われるより安定しやすい」
オリエさんの適切なアドバイスに従ってやってみる。
目を閉じて魔力の塊を作るイメージ――球体でやってみよう。
体の中を魔力が動いてるような感覚がする。
これで合っているだろうか。
「ノアさん、ストップストップですわ!!」
集中している最中そんな声が聞こえて目を開くと、想像していたよりも数倍大きな魔力の塊ができてた。
「ノアさん維持して! そのままひとまず維持!」
オリエさんが初めて聞くような大きな声でそう言ってくる。
なぜそこまで言うのかとも思ったけど、集中が切れて数秒たった今になって自覚できた。手の上にあるこれが崩壊しそうな予感がする。
ただ、維持させるといってもどうやればいいのか。とにかく必死に、これを壊さないようなイメージを手の上にしてみると、どうにか崩壊は抑えられた……けど、形が歪に安定しない。
「こ、これどうすればいい!?」
「飛ばせそうならえっと――空! 空に向かって飛ばすんですわ!」
この大きさのまま人形にぶつけるのはたしかにあれかも。まず真っすぐ飛ばなかった場合が怖い。
できるかはわからないけど言われたとおり腕を振り上げて、魔力を全部空に飛ばす。
塊は飛ばして少しすると球体が崩れて拡散するように空に飛んで消えた。
人形に向かって飛ばしたらどちらにしても危なかったかも。
そして、ボクはというとものすごい脱力感に襲われて、空に手を振り上げた勢いのまま地面にへたり込んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか、ノアさん」
二人がかけよってくる。
「とりあえず大丈夫だけど。なんかすごい疲れた感じが」
「そういえばノアさんは魔力量自体はあんまりでしたわね」
「それだと今の量放ったら疲れても仕方ない」
改めて自覚できた自分の魔力量。でも、何であんなに大きくなったんだろう。
イメージの問題かそれとも質が良いと言われていたのが影響しているのか。
「何か今すごいものが見えたが、何があった?」
流石に先生もやってきたらしい。まあ、ボクの知識の中でもあの魔力の塊はおかしかった。
「ノアさんがまだ慣れていないこともあって放出魔力の調整に失敗したとわたくしは考えていますが」
「私も同じ考え」
「そうか。まあ、それなら問題ないな」
問題ないのか。
口には出さないけど心の中でそう突っ込む。ただ、多分何も言わなくても説明はしてくれそうな気がする。
「そうなんですか?」
「最初から全員が魔法を使えることを前提としていないからな。むしろ暴発させなかっただけ安心した。数年前は暴発して、壁一面が焦げたやつがいたからな」
それは他のクラスメイトは無事だったんだろうか。
でも、それの当事者というか実際にやった例にならなくてよかった。
「ただ、ノアの魔力だと……大丈夫か」
先生がそう言ってボクの方をみてくる。
「動けはしますけど、もう一回やれと言われたら正直つらいです」
嘘偽りなく答えておく。
脱力感が襲ってきて最初は感じなかったけど、座っているうちに体の中にいつもはあるはずの何かがなくて落ち着かない感覚にも襲われてくる。状況から考えれば魔力が切れかけてるってことだと思う。
そう考えると、これ以上無理やり魔法を使って魔力を放り出そうものなら、魔力以外の何かすら犠牲にしかねない気がして恐怖の感情すら生まれてくる。
「それなら、今日は無理せずにあとは見学しておけ。個人の課題の時に魔力のコントロールは必須みたいだな」
「お願いします」
課題が早い段階でわかってよかったと喜んでおこう。
その後はオリエさんとアミリアさんの魔法を見学した。
オリエさんは全体的に好成績といった感じでアミリアさんは威力や大胆さはあるけど、緻密なコントロールは苦手そうだ。
なんとなく人柄にあってると思うけど、そういう部分もやっぱり影響出るのかな。
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