魔法基礎1

 装備の採寸ということで実技に入るのは届いてからかと思ったけど違うらしい。

 その日の午後に訓練場に集合となった。


「今日は魔法の授業だ。とはいっても基礎の確認になる」


 ボク達から離れた位置には木製人形が立っていて、顔に的であろう板がついている。


「座学の時や判定のときにも教えたが、個人によって得意な属性は違う。しかし、どの属性でもできる魔法はいくつかある。その一つがこれだ」


 先生はそう言うと手のひらを人形の方に向ける。そして、球状の何かが出てくると、それが人形の方に向かって飛んでいった。

 そして、直撃した人形は見事に吹き飛んで地面に倒れた。

 人形の少し遠くで待機してた人たちが人形を直しに走っているうちに先生はこちらに向き直って説明を再開した。


「攻撃魔法の基礎である『エネルギー・バレット』だ。属性によって微妙な差はあるが、基本的には魔力の塊をぶつける魔法だと思えばいい」


 最近気がついたけどこの先生は、説明はしっかりしているけどやり方は感覚的な気がする。


「まあ人形を3体用意してるから3組に分かれてくれ。今日はこの魔法をまず覚えることだ。すでに使えるものは精度を上げたり教える側に回るように。装備が届いたら属性や練度によって別れるが、そちらはその時に教える」


 ということで分かれたけど、このクラスはわりとここで苦労はないらしい。

 仲が悪そうに見えていつも競い合ってる結果、こういうときは結局まとまっている4人で1組が出来上がる。そしてアミリアさんに引っ張られつつボクとオリエさんの3人で1組が出来上がって残った人たちも仲がよく一組になるわけだ。

 アミリアさんがたまに組を行き来してるけど、このクラスのグループはだいたいこの3つが固くなっている。ボクは特に何もしてないんだけど、居心地は悪くないし気にしていない。

 ただ、魔法については本当にわからないことだらけだ。文字と実戦でこれほど違うことはないだろうというレベル。


「それでは、やりましょう! ちなみにお二人は魔法は?」

 別れて人形前に集まるとアミリアさんがそう聞いてきた。

「ボクは本当にさっぱり」

「私はむしろ得意分野」

「わたくしは魔力自体はよく使いますが、魔法というより武器に付与ですわね」

 全員が見事にバラけた。

「じゃあ、私からやる」

「お願いしますわ」


 オリエさんが一歩前にでて先生とは少し違って手のひらを上に向ける。そして手のひらの上に魔力の塊ができると、腕を軽く振って投げるような形で飛ばした。

 的の真ん中とはいわずも人形には命中して、人形が揺れる。


「お見事ですわ!」

「お~」

 思わずボクは拍手してしまう。飛ばす時には、あんな風でもいいのか。

「魔法は名前がついてるけど、基本的には特別なものを除けばイメージを具現化させる感じでできるようになる」

「へ? そうなの?」

「うん。ただ、歴史的にはそれを後世に伝えて残すために最初の魔法使いが人に教えやすいように名前をつけてイメージをしやすくしたって説がある」


 いつもと違ってなんというか楽しそうに話すオリエさん。魔法が好きなのかな。


「他にも説はあるけど、一番信じられている説はそれ」

「まあでも、たしかにふんわりしたイメージで伝えられるだけじゃ、できない人はできなさそう」

「わたくしも正直、お母様が教えるのがあまり上手くなく。感覚だけで教えられていた時期はかなり苦労しましたわ」


 逆にアミリアさんは魔法そのものが苦手そうだ。

 武器に付与は入学試験で実際に目にしてたから得意なのがわかるけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る