自分に似合うもの
改めてボク含めた自己紹介をすることになって、店の奥へ案内された。
いいのかな。
「ファル・リエゴよ。気軽にファルって呼んで。このお店で服を売ったりしてるけど、最近は直接頼まれたドレスや服をデザインするほうが多いわ。アミリアちゃんのルージュ家はその中でも一番のお得意様なの」
「ノア・フィオラです」
「あら、フィオラ家のお嬢さん……ああ! この前発表があった!」
「えっと、学園で忙しくて聞いていないんですが、一体何が……」
「リチアさんが直々にでてきて、実は妹がいますって大々的に言ってたわよ」
あの人は一体何をしているんだ。
これで、男に戻ったらその妹の存在消えることになるぞ。
「体が弱くて、別の領地で療養していたみたいに聞いてたけど……そう。あなた……」
「えと、あの、なにか?」
「いえ、その……失礼なことになっちゃうと思うんだけど大丈夫?」
「ボクは大丈夫ですが」
ボク個人に対する罵声とかは良くも悪くも慣れてるしリチアさんとの関係については、もう深く考えたら負けだと思い始めた。
「あんまり似ていないなって」
「…………よく言われます」
だって一切血の繋がりなんてないどころか、元々は男だからね。髪色とか泣きぼくろ以外の面影ないぐらいに体変化しているわけだから、似てないと言われてもそうだねとしか返せない。
仮に似てたとしてもそれも偶然としかいえないし。
「でも、そう……ご贔屓にしてくれると嬉しいわ。フィオラ家とは何度かパーティーで出会ったくらいだから親交はないけど」
「は、はい」
「あとはそうね。これは、一応だけど、リチアさんが大々的に発表をしたからといっても名家で、確執のある家とかもあって変な噂も出回ってるけど、あんまり気にしないようにね。町で何かあったら、近いならうちに逃げ込みなさい。アタシもなんだかんだで、家は平凡でも商売で名が売れて有名だから簡単には手を出してこないわ」
「わかりました」
この人ものすごくいい人だな。
あとやっぱり家どうしの確執ってあるものなんだな。
まあ王族じゃないし、王族でもやっかみを持つ連中はいるからな。スラムにきたばかりの人なんかは王族や国の対応が遅いと不満ばかりだったのを聞いて育ってるから実感できる。
「それじゃあ、早速だけど自由に見ていって頂戴。試着とかも全然いいし、アタシにまかせてくれるならそれもありよ!」
「ひ、ひとまずお店の中を見せてもらいます」
絶対にそれは着せかえ人形にされるやつだから断りたい。
「ひとまずお店の中を見てからファルさんのお力をお借りしますわ!」
なんか不穏な言葉がアミリアさんから聞こえたけど気の所為だよね。
その後、しばらく店内を見て回った。
アミリアさんの家が贔屓にしていると言っている。つまり貴族が贔屓にしているというだけあって、どれもたしかにセンスがいい。
ただ、たまに先鋭的すぎて大丈夫かっていうものや、露出的に大丈夫なのかというものもあった。
あと、色々と一緒に見ていてわかったけど、アミリアさんは暖色系が好きらしい。まあ性格的にもイメージどおりではある。
彼女がオレンジの服とか似合う形できたら太陽みたいになるんじゃないかとすら思うな。
ちなみに、ボクはイマイチボクに似合うというものがなかった。というよりもやはり感覚的にわからなかった。
一般的な可愛いはわかっても自分に似合うがわからない。
ただ、少し自分の中で思ったことがあって、わからないじゃなくて無意識にわからないことにしてるのかもしれない。だが、男に戻ることを考えるとそこのストッパーは今後も働いていてほしいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます