得意分野
昼も過ぎて闘技場とは別の学園の敷地の端っこに集合をかけられた。
地図上だと特に名前がつけられてないけど、かなり長い範囲がこの施設の扱いになっていたけど。
そう思って辿り着いた時、その理由がわかった。
障害物とでも言えばよさそうな壁や地面のへこみなどが一本道の中に数多く作られている。
身体能力の判定というのもなんとなく予想がついた。
ようするにここを走破する間に、跳躍力だとか腕力とか、工夫する力を測るってことだろう。
ただ、思うことは一つある。
ここを動きやすく作られているとはいえ制服のまま走るの?
午前中から思ってはいたけど、実技訓練用の服とか簡易的な防具はないのだろうか。
まあ、今言ったところですぐに準備されるわけでもないし仕方ないけど。
授業が終わったら聞いてみようかな。
とにかく、まずは実際にやることを聞こう。
「全員揃ったな。まあ、見ての通りこのルートを走破してもらう。まあ、途中リタイアもありだが、リタイアよりは、これは無理というものは飛ばしてひとまず最後までいってもらいたい。何か質問は」
みんな特になさそうだ。むしろ例の4人はどちらが先に走破できるかの競争でも始めそうな雰囲気が漏れて出ている。
「よし、それじゃあ、ふたりずつスタートだ。えーと……まずはアミリアとノア」
「はい! ノアさん。負けませんわよ!」
「そういうのじゃないと思うんだけど」
でも、なんでボク達が最初なんだろう。
そう思ったのが顔にでていたのだろう。
「ちなみに、順番は入学試験の模擬戦時の動きなどから予想して早い順だ。うしろから追い抜いてもいいが、あまりそういう状態にしたくないということでな」
「……そうなんですね」
「不満か?」
「いえ……あんまりそれで最初になる実感がないだけです」
「そうか。まあ、それは今日判定してみればわかることだ。それじゃあ始め!」
先生の言葉でひとまずボクとアミリアさんはスタートした。
最初は小さな壁が連続して、少しずつ高い壁になってる。まあ、これは乗り越えろということだろう。
壁に角度もないから手で掴むしかなさそうだけど。
最初の数個の壁は難なく越えられた。
これくらいならスラムで追われ追いかけをしている時にしょっちゅうやっている。むしろ、この壁の上にたって横の建物に飛び移るぐらいまではできると思う。
あえていうならスカートだから、それが気になるくらいだ。どうしても両手で掴んでよじ登る高さになると隠せない。まあ下に人がいるわけじゃないけど。
そして横のアミリアさんも、わりと難なく乗り越えていく。お嬢様のはずだけど慣れてるのかな。それとも単純に身体能力が高いのか。
だが、最後の壁に迫ったところで、体の違和感に気がついた。
戦闘とかはしていたけど、走り回るとかはこの体になってからしたことがなかった。
結果今更気がつく、身長による誤差だ。ついでにいうなら胸とか体の感覚で、集中が削がれる部分もだけど。
今までだったら軽い助走で越えられたはずの高さだけど、天辺を掴みそこねてしまった。
「うーん……」
ただ、壁と壁の間が微妙に短いからな。
ボクは助走を増やすのではなく壁を一度蹴る形で天辺を掴んでどうにか乗り越えた。その後も同じ方法で乗り越えられて、最初の関門は突破だ。
だけど、そうか。身長の誤差は修正してなかった。自然とされるものだと思ってたけど、合わせていかないといけなさそうだ。
その後に広めの穴やネットをくぐる障害物、更に紐に捕まって向かい側に飛び移るなど。絶対に貴族だったら経験してなさそうな障害物を乗り越えてゴールできた。
難易度はそこそこだったけど、おかげで1日で誤差の修正ができたのはよかった。
「はぁ……はぁ、ノアさん。全然疲れていませんわね」
ゴールのタイミングは似た形だったけど、アミリアさんは横で息を切らしていた。
まあ、普通だったら疲れる気がする。ボクの場合はコツを知ってるから疲れてないだけだし。
「まあ……そういうこともある」
「そうですか。くっ、今回の勝負は勝てませんでしたが」
「いや、ゴールは一緒――」
「勝てませんでしたが。いずれまた勝負ですわ!!」
ボクの何が彼女の琴線にここまで触れているのかはよくわからない。
でも、なんとなくこういう関係も悪くないと思えるようになってきた気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます