番外編

思い出したくもないバレンタイン

「おはよう、藤倉くん。」

 2月14日、外は猛吹雪なのに幼なじみの二見美月が玄関にいる。

 次の言葉はこのくそ小説読者ならわかるよね。


「これを三好くんに渡して。」



 バレンタインぐらい自分で渡してくれって。


 窓から外に投げてやろうかと思ったが、除雪中の母親に当ててつまらないことで怒られてもしょうがない。



 毎日無視していたが、今日は珍しく板チョコをくれたので渡してやろう。


 バス、電車、地下鉄と乗り継いで学校に行く。


 教室で三好に、

「ストーカーからのプレゼント。」

 と言って二見美月からのチョコレートを渡す。


 お互い怖いもの見たさで箱を開ける。


 手先は器用ではないため、見た目はお世辞にもよくない個体が入っていた。


 何が入っているかわからないので、理科の実験のように手であおぎ臭いを嗅ぐ。

 異臭はしなかった。


 現実を回避し、封の開けられていない二見美月からもらった板チョコを二人で分けていると、ストーカーが扉で騒ぎ始めたが無視する。


 ストーカーからのプレゼントなんて何が入っているかわからない。

 まあ、本命を食べてもらえないだろうから義理を食べさせてやった。

 ありがたく思え。



 フリーズしていると、時間が過ぎホームルームが始まる。


 ストーカーは教室に戻ったようだ。


 ともかくこれはこっそり捨てよう。


 捨てたのがばれて、母親、妹、二見美月に処刑されたのは言うまでもない。


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