第30話 Dランク昇格

ハルトは冒険者ギルドの受付に並ぶ行列の最後尾に並んだ。


すぐ前に並んでいた女性冒険者が振り返る。


「あらぁ、可愛い猫ちゃん!」


「どうも……」


「ワタシはスヴィ!宜しくね」

スヴィのフルネームはスヴィ・ド・フラン。


ウィンクをする勢いの強烈な笑みでハルトに話し掛ける。


「俺はハルトです」

苦笑いを浮かべてハルトは答えた。


「抱っこしても良いかしらぁ?」


「どう?」

ハルトはキュウに聞いたが、首を振るキュウ。


「ダメらしいよ」


「あらぁ、残念。お利口な猫ちゃんだわ、従魔なのねぇ。見た事が無いモンスターだわぁ、何て言う種族なのかしら?」


スヴィはキュウについている従魔の証を見た後、キュウをジロジロ見ている。


「冒険者の秘密の詮索は厳禁ですよ。すいませんが、恥ずかしがり屋なので、そっとしてください」


「ふーん。つれないわねぇ」


スヴィは前を向いて、隣の冒険者と話し始めた。


暫く無言で行列が進むのに合わせて、少しずつ前に進む。


半分ぐらいの冒険者は依頼未達成だが、何とかペナルティにならないように、一所懸命説明をしているので、進むのが遅い。


受付嬢もみんな同じ事を説明しているので、森にモンスターが居なくなって、虎のモンスターが飛んでいた事を、調べる事にする旨を冒険者達に説明していた。


ハルトの番になった。

受付嬢はクスカだった。


(人が多くて受付嬢まで確認出来なかったなぁ)


「あら、ハルトさんも依頼未達成ですか? 依頼は受けてなかったはずだけど?」


ハルトが槍しか持って無いのを見てクスカが話し掛けてきた。


「あぁ、常設依頼の報告です」


取り敢えず猪のモンスターの魔石を10個、ゲイ・ボルグから展開して、カウンターに並べた。


「え? こんなに?」


「これでDランクに上がれますか?」


「うーん。まだまだかなぁ?」


「じゃあこれではどうですか?」


鼠のモンスターの魔石と青虫のモンスターの魔石を10個ずつ、カウンターに展開した。


「えええええ! どうやって、倒したのですかぁ? みんなモンスターが居ないって言ってるのにぃ!」


「ちょっとちょっと、小さい声で話しをしてください。注目を浴びるのは困ります。今朝もアイテムボックスの事を大声で言うから、冒険者に絡まれましたよ」


「はっ、すいません。……つい。以後気を付けます。この量ならDランクに昇格出来ますよ」


「じゃあ、昇格をお願いします」


ハルトは冒険者証をクスカに渡す。


クスカは冒険者証を受け取ると、カウンターの下でゴソゴソやって、Dランクの冒険者証と常設依頼の報酬をハルトに渡した。


「最後にこれって買取して貰うと幾らぐらいになりますか?」


ハルトは冒険者証と報酬を受け取ると、マンティコアの魔石をカウンターに置いた。


ゴトッ。


「……え? これって? えええええええ! マンティコアあああああ!」


「ちょっと落ち着いてください。声が大きいですよ。」


「だって、だってぇ! 森のあるじ、マンティコアの魔石ですよぉおおおおお!」


「どうしたぁ? 何があったぁ?」

「クスカちゃんどうしたぁ?」

「おい、お前見ないツラだなぁ」


冒険者達が集まって来た。


「はぁ……」


俺は溜息をついて、マンティコアの魔石をゲイ・ボルグに収納して、知らないふりをする。

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