第29話 銃

サトリが門の前でしゃがんでいる男達から、ある一定距離で立ち止まった。


「どうした?」

ドンギューも立ち止まり、サトリに聞く。


「2人は銃を持ってる。これ以上進めば撃つ気だ」


男達は徐に銃を出した。

「何で分かった?」

「それ以上近づくと撃つぞ」


「ほほう、銃か。どれどれ?」

男達の間にひょいと座ったぬらりひょん。


「ん? じいさん、ここは危ねえぞ」


「儂に見せてくれ」

ぬらりひょんは1人の男から、銃を借りた。


「おいおい、気を付けろよ」


「ここを引くと弾が出るのかのう。」

ぬらりひょんは銃を持っている男に、銃を向けて引き金を引いた。


ダン!!


男の額に赤い穴が空いた。

信じられない顔をして倒れる男。


「じいさん! 何て事をしちまったんだ」

焦る男。


ドーマンは立ち止まり地面に手を翳す。


地面から牛鬼が這い出て来た。


ズズズズ……。


牛鬼が這い出る音を聞いて振り返る男。


「ば、化け物!」


カサカサカサ……。


凄い勢いで男に襲い掛かる牛鬼。


「じいさん! 銃を貸してくれ!」


不思議そうに銃のあちこちを見ているぬらりひょんに埒が明かないと思い、

脇を抜け倒れた男が持っていた銃を、素早く拾うと男は牛鬼に向かって撃つ。


ダン!!ダン!!ダン!!


目の前に迫った牛鬼の腹に3発の銃弾が当たるが、弾は跳ね返った。


「ば、馬鹿な! オークでさえ仕留める銃弾を──」


牛鬼の爪が男の胸を貫いていた。


男を貪り喰らう牛鬼を尻目に、2丁の銃を手にドーマンに歩み寄るぬらりひょん。


1丁の銃をドーマンに渡した。


「ふむ、この世界には面白い武器があるのう。弱い者でも指先を動かすだけで人を殺せるのか、ふふふ」


銃を懐にしまって歩き出すドーマン。

牛鬼が男達を貪り喰らう様を、青い顔で横目にして、ドーマンの後に続き門の前に進むドンギュー。


「牛鬼、門を開けてくれ」


ドーマンが牛鬼に頼むと、牛鬼は男達を喰らうのを止めて門の前に進み。


ドガッ! ガタガタン!


爪を門に打ち付けると、門が弾け飛んだ。


壊れた門の中に進むドーマンとドンギュー、サトリ、ぬらりひょん。


そして先頭を進む牛鬼。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ダンジョン都市クサンマルの近く、人気の無い森の中で、窮奇のキュウは空から降り立つ。


大きいサイズで都市に入ると問題がありそうなので、キュウは子猫サイズに戻ると、ハルトの左肩の駆け登った。


ハルトは門まで歩いて行くと、冒険者証を門番に見せて都市に入る。


冒険者ギルドに入ると依頼達成報告の冒険者達でギルド内の1階ホールは大混雑していた。


そして、何だか騒がしい、受付で大声をあげる冒険者達がいた。


「本当なんだよぉ! 信じてくれよぉ!森にモンスターがいなかったんだぁ! だから依頼未達成は勘弁してくれぇ」


「急にいなくなるなんて信じられないなぁ」


「空を飛ぶ虎を見たんだぁ! 森にモンスターがいなくなった事と関係があるかも知れない」


「そんなモンスター聞いた事もないぞ」


ハルトが調子に乗ってモンスターを狩り過ぎたのが、不味かったらしい。


(キュウの姿を見られたみたいだね)


(そうだにゃ。 問題あるかにゃ?)


(従魔登録してるから問題は無いけど、モンスターを根刮ぎ狩ったのが分かると面倒そうだね。ここは知らないふりをしておこう)


(分かったにゃ)

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