第27話 マンティコア

ハルトが窮奇のキュウに乗って、徒ならぬ気配がある森の奥に進む。


気配の主は、木の陰から覗く真っ赤な顔の野蛮そうな顔の男で、鋭い牙とライオンの様な鬣があった。


空中から、気配の主をじっと見ていると。


男?がのそりと前に歩き、木々から出た身体は真っ赤なライオン。尻尾には太い棘が1つと、周りに24本の細い棘。


マンティコアだ。


マンティコアは、前にいる熊のモンスターを狙っている様だ。


背後からゆっくりと進み、尻尾を高く上げて棘を熊のモンスターに向ける。


シュッ!


低い音がすると、24本の棘が熊のモンスターに突き刺さった。


「ふがっ」


熊のモンスターはマンティコアを振り向き、走り出すが……。


ドタン!

「ぐぁああああああ」


急に力が抜けて苦しみながら倒れた。


毒か?


いつの間にかマンティコアは熊のモンスターの背後に移動していた。


素早い動きだ。


前足で熊のモンスターの頭を潰し、生のまま喰らいつく。


「さて、どうしようか?」


『今がチャンスだ。熊を食べてる隙に倒せば良い』


「どうやって? 近くに降りたら気付かれるだろう。動きも素速いぞ」


『我を投げろ。今までの戦いでレベルが上がって投擲のスキルがあるのだ。あっはっは』


「おいおい、レベルが上がったら都度教えろよ」


『それは済まんな。見てみろ』


ハルトの頭の中にゲイ・ボルグの情報が表示された。


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名前 ゲイ・ボルグ

種類 神槍

レベル 2

穂 アダマンタイト製

柄 海龍の骨

石突き アダマンタイト製

柄巻き 神紐


基本機能

 不壊、召喚、会話、加重

追加機能

 収納、投擲


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確かに追加機能に投擲が増えていた。


「まったくもう、報連相は大事だぞ」


『あっはっは、分かった分かった』


俺はキュウに乗ったまま、マンティコアを狙って槍を振り上げた。


投擲のイメージが頭に浮かび、スムーズに身体が動いた。


シュッ!

ドシュッ!!


ゲイ・ボルグはマンティコアの頭を貫いた。


「死んだにゃ」


『お!レベルが上がったぞ』


「はぁ、スキルは覚えたか?」


『うむ、レベルが3に上がって、追加されたスキルは神速だな。我を持つと速く動けるらしいぞ』


「おお!それは良いね」


俺達はマンティコアを傍に降りて、マンティコアの死骸をゲイ・ボルグに収納した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方ドーマン達は……。


百々目鬼に怯える男達だが、

「くっ、気味悪いが女のモンスターはそれ程強くは見えねぇ。数で襲って武器を奪って殺すぞ」


「ああ、人数はこっちの方が多い」


男達は素手でドーマン達を襲う事にした様だ。ドーマン達にじりじりと近付く男達。


「俺は眼中に入ってない様だな?」


ドンギューが剣を抜いて構えるが、男達は百々目鬼を見ていて、ドンギューは目に入らない。


百々目鬼に魅入られてるのだ。


その時、男達とドーマンの間に黒い影が広がる。


黒い影から牛の顔に蜘蛛の身体の妖怪が這い出て来た。


牛鬼だ。


「ひぃ」

「化け物!」


ドシュッ!!


逃げ出す男達の後ろから、牛鬼が男達の身体を蜘蛛の爪で突き刺す。


「何処に行くのかしら? 逃げられないわよ」


男達が逃げ出す袋小路の先に、上半身が女性で下半身が蛇の妖怪が浮かんでいた。


磯女だ。


蛇の尻尾が男達を薙ぎ払う。

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