第26話 百々目鬼
ドーマンとドンギューは、ダオラン王国の都市イドンテに来ていた。
都市に入る為に並ぶ行列を見て、辟易していたドーマンに、突然声を掛けてきた怪しい3人の男達。
「おっさん、俺達が並ばなくても街に入れてやるよ。こっちに来な」
胡散臭い男達は顎で、門とは逆の方向を示す。
「おい、滅多な事は言うな」
ドンギューはドーマンが暴れ出さないか心配で、慌てて男達に注意しながらドーマン顔色を覗う。
ドーマンは特に苛立つ様子もなく、
「良かろう、案内せい」
と男達について行こうとする。
「はぁ……」
これから起こる事を考えると、憂鬱になるドンギューは溜息をつく。
「ククク、こっちだよ。おっさん達」
(おっさん
ドンギューはちょっとイラッとして、腰の剣に手を添えた。
「
ドーマンはドンギューに小声で注意した。
「は、はい」
ドンギューは慌てて剣から手を離す。
ドーマンとドンギューが男達についていくと、案内されたのは城壁の外側に立てられたスラム街だった。
行き止まりに連れて来られて、
「さて、有り金を全て出して貰おうかぁ!」
と言いながら男の1人が振り返った。
「着ている服を脱いで、武器もよこしなぁ」
もう1人の男がドスの効いた声で、脅す様に言って睨む。
ドンギューは腰の剣に手を伸ばす。
「おっと、五体満足で帰りたかったら、抵抗しない方が身のためだぜ! 後ろを見てみなぁ。」
ドンギューが後ろを振り向くと、後ろに数人の男達がニヤニヤ笑いながら、ナイフや斧、鉈などの武器を手にしていた。
中には弓を構えた男もいる。
「ちっ」
ドンギューは剣を抜いて構えた。
「ふむ」
ドーマンは顎髭を触りながら、考え事をしている様だ。
「お主らも馬鹿じゃのう」
武器を構えた男達の間にひょいと現れたおじいさん。
「じいさん、危ないから離れてな」
思わず声をかけるが……。
そのじいさんは『ぬらりひょん』だった。そして隣には存在感が薄いノースリーブの女性が立っていた。
その女性は、するりと男達の間を抜けて、ドーマンの隣に歩む。
バラバラバラ……。
女性が手に持っていた武器の山を、ドーマンの前で落として、ドーマンに微笑む。
「え? な、ない?」
「武器が無い?」
「いつの間に!」
「おい!武器を返せ!」
男達の持っていたはずの武器を女性がスリ盗ったのだ。そして女性の両腕には沢山の目が浮かぶ。
「化け物!」
「げっ! モンスターか!」
男達に妖艶に微笑む女性は、妖怪『百々目鬼』だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、ハルトは窮奇のキュウに乗り、森の奥を飛んでいた。
「徒ならぬ気配がするにゃ」
「森の主かな?」
『よーし、レベ上げだぁ』
ゲイ・ボルグはやる気満々だ。
俺達は気配のする方角に飛ぶ。
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