第25話 解体所のボー

ハルトは冒険者ギルドの裏にある解体所に来た。


「すいませーん! 誰かいませんかぁ!」

ハルトが大声で叫ぶ。


「ん~。何の用かしらぁ!」

解体所の奥から出てきた作業着の女性。


「受付のクスカさんから、こちらで買い取りして貰う様に言われたのです」


「ふーん。量があるのかしらぁ? あら、初めて見る顔ねぇ、ワタシの名はイビッグ・ボー、ボーと呼んでねぇ」


「俺はハルトです。それなりに量がありますよ」


「じゃあ、あっちの倉庫に出して貰おうかしらぁ、鞄を持って無さそうだけど、アイテムボックスのスキルでもあるのかしらぁ。」


「秘密です」


ハルトはボーに指示された倉庫に歩いていき、ゲイ・ボルグから素材を出していく。


「まあ、冒険者のスキルは深く追及はしないわぁ。おぉー! 割りと強力なモンスターの素材もあるのねぇ。ハルトが倒したのかしらぁ?」


「そうですよ。俺と相棒で倒しました」


「相棒?」


「僕だにゃ」

ハルトの左肩乗ってたキュウが答えた。


「おぉー。猫が喋った! 可愛いぃ! 従魔なのねぇー。」


キュウに駆け寄るボー。


「ねぇ、ねぇ、抱っこしてもいいかしらぁ?」


「イヤにゃー」

キュウは飛び上がりボーの手を躱した。


「あらぁ、飛んだ! 翼があるのねぇ。猫に翼……、見た事ないモンスターだわぁ」


飛び回るキュウをジーっと見詰めるボー。


それを気にせずハルトは倉庫に素材を積み上げていく。ダンジョン『聖獣の祠』や、この都市に来る途中で退治したモンスターの亡骸などを、大量にゲイ・ボルグに収納していたのだ。


キュウに見とれていたボーが、素材の山を見て驚いた。


「え? え! ちょっとぉ、何よこの量ぉ!」


「全部出しました。買い取りをお願いします。」


ハルトがボーに言う。


「はぁ、今日は徹夜確定ね……」


ボソッと独り言を言うボー。


「査定は明日まで掛かるわ、明日の朝また来てちょうだい」


「分かりました。宜しくお願いします」


ハルトは解体所を後にすると、空からキュウが降りて来てハルトの肩にとまる。


「さて、どうしよっかなぁ」


「クスカに教えて貰った森に行ってみるにゃ」


「そうだね」


ハルトは森に向かった。


都市を出て少し歩くと森があった。

何の変哲も無い普通の森。

森の中に入る人も多いのか、割りと広めの道があった。


森の中を進むハルト。


「取り敢えず、常設依頼のモンスターを狩るか。キュウ、猪や鹿、鼠のモンスターがいる方向を教えてくれ」


「分かったにゃ」


キュウの探知能力は高く、かなり遠くにいるモンスターも探知出来る。


狩りの途中から、人目の無いところで大きくなったキュウ乗り、空から最速&最短距離でモンスターに迫り狩りまくるハルト。


この後、冒険者ギルドで、空飛ぶ虎のモンスターの噂が広がる事を、ハルトは知らない。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

ダオラン王国の都市イドンテを訪れたドーマンとドンギュー。


「はぁ、何だこの行列は?」

都市に入る為、門に並ぶ行列を見て溜息のドーマン。


「都市に入るのに並んでいるのです」

ドンギューはドーマンに説明責任するが、ドーマンは行列に並ぼうとしない。


「こんな行列に並んだら、いつ都市に入れるのだ」


「今日中には入れると思いますが……」


「ふむぅ……」


「おい! 変な服のおっさん、並ばねえのかぁ?」


冒険者風の乱暴そうな男達が、ドーマンに声を掛けてきた。


ドーマンは漆黒の狩衣かりぎぬに烏帽子の陰陽師の服であるため、どうしても目立つのであった。


「おい! 滅多な事を言うな。」

ドンギューが焦って男達に注意するが、男達はニヤニヤ笑っている。


「何処の国から来たか知らねぇが、高そうな服を着てるじゃねえか」

「腰の剣も上等そうだ」

「金も持ってるに決まってる」

男達は不穏な事を口走る。

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