第11話 謁見の間その後

ぬらりひょんと共に、謁見の間に戻って来た天才魔道錬金術師のケンヤ・ヨイは、その阿鼻叫喚の状況に息をのみ立ち止まる。


「な、なんだ?この状況は……」


そして、充満する濃厚な血の臭いと、身体を土蜘蛛と鬼達に喰われていく人々を見て、吐き気をもよおす。


「うぷっ、うぇっ……」


「さぁ、あちらに行くぞ」


「あ、あぁ……」


ぬらりひょんは血の気が引いたケンヤの手を引いて、ドーマンの前まで来た。


ドーマンの側には蜘蛛の糸に拘束されて、腰を抜かしへたり込んだ、国王とミワタ宰相、ヤスキ将軍がいた。


一通り吐いた後でげっそりしたためか、青白い顔で涙を浮かべながら疲れ果てている。


「ぬらりひょん、ご苦労だったな」


「いえ、何の苦労もありません」


「こいつの知識は必要なのでな」


ドーマンとぬらりひょんの会話に割り込むケンヤ。


「ゆ、勇者ぁ!お前はこんな悲惨な事をして、何も思わないのかぁ!」


「ん? 思わんな。貴様らも戦争で、もっと沢山の人を殺しているだろう」


「い、生きたまま人を喰らうとは、悪魔の所業では無いか? な、何でそんなに平然としている!」


「こいつ煩いなぁ。白澤、サッサと喰っちまえ!」


隣にいた酒呑童子が白澤に言うと、ドーマンの目を見て同意を求める。


白澤ドーマンを上目遣いで見る。


「良かろう、許可しよう」

ドーマンの言葉に白澤が動く。


目の前の会話の意味が分からず、ドーマンを睨み続けるケンヤの前に白澤が歩み寄る。


おもむろに白澤はケンヤを突き倒すと、前足でケンヤの身体を抑える。


ドン!バタッ!


「な、何をする!あっああああ……」


グシャ!


そしてもう片方の前足でケンヤの頭を潰すと喰らい始めた。


「ひ、ひぃ。我をどうするつもりだ」

国王は恐怖で顔を歪めてドーマンに問う。


「記憶と身体を貰って、食い殺す」

ドーマンは淡々と告げた。


「ひゃ、ひゃめて、助けてください」

国王は泣きながら懇願する。


ドーマンの後ろから3体ののっぺらぼうが現れた。


のっぺらぼうは顔を国王に近付けていき、額を接触した。


のっぺらぼうは国王に変化していく。


蜘蛛の糸に拘束された国王の顔が消えていき、完全に消えた後、土蜘蛛は国王だったモノを食い始めた。


「ひぇ、こ、こんな事があってたまるかぁ!」

ヤスキ将軍は身体を動かして、拘束から逃れようとするが、蜘蛛の糸はビクともしない。


国王と同じように、ヤスキ将軍とミワタ宰相も、のっぺらぼうに入れ替わられた後で喰われた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


小高い丘の木の上で、ギーベル軍が帝国軍に蹂躙されている状況を黙って見据えるハルト。


ほぼ壊滅したギーベル軍、阿鼻叫喚の地獄絵図も収まり、帝国軍はギーベル軍の掃討に移っていた。


一人一人生死を確認し止めを差していくオーク兵達。


ハルトは木から降りると、後方の町へ走り出した。

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