第9話 酒呑童子

「がははは、これで決まりだな!ドンギュー、お主の起死回生の手とやらは、儂の魔道ゴーレムに劣る事が明確になった。この魔道ゴーレムがいれば、その貧弱な勇者と気味悪い異世界のモンスターは要らないだろう。ぐはははは」

ヤスキ将軍は嘲り笑う。


「うむ、勇者どもは処分だな」

ミワタ宰相はそんな事を言い出した。


「おいおい、態々異世界から呼び出して、用がないと思ったら、直ぐに処分か、酷い奴らだ生かしておく価値は無いな。はっはっはっは。」

ドーマンは大声で笑う。


「うぬ、陛下の前でなんと不遜なぁ!無礼者め、気が狂ったか、者共引っ捕らえろ!」


宰相の号令で謁見の間にいた騎士達が、ドーマン達の元へ駆け寄った。


その時、ドーマンの周りに複数の魔方陣が浮かび上がり、土蜘蛛が湧き出る。


カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ、カサ……。


「それは、こちらの台詞だ。茶番は終わりよ、蹂躙の時間だ!行け土蜘蛛」


ドーマンの号令で土蜘蛛が騎士達を襲う。


「うぬ、面妖な。魔道ゴーレムよ。蜘蛛共を蹴散らせ!」

ヤスキ将軍はゴーレムに指示を出した。


「ふっ、先ずは木偶の坊を始末するか、出でよ!酒呑童子!」


ドーマンの言葉により、一際大きい魔方陣が魔道ゴーレムの前に現れた。


魔方陣より現れ出でたのは、金剛力士の様に上半身裸で筋骨隆々の鬼。


赤い肌で額に2本の角、右手の金棒を肩に担ぎ左手に徳利を吊した紐を持っている。


「おう、このでかい人形が相手かい、がっはっはっは」


ギー、ガシャン。


魔道ゴーレムが酒呑童子に大剣を振り下ろす。


ガキン!


酒呑童子は魔道ゴーレムに大剣を金棒で弾くと、魔道ゴーレムは体勢を崩し蹌踉ける。


ドゴン!


その後、金棒が魔道ゴーレムの頭部を粉砕し、2撃目で魔道ゴーレムの身体も叩き潰した。


グシャッ……。


「え? ば、馬鹿な? ミスリルの鎧を纏ったゴーレムだぞ! 一撃で潰れるとは、そ、そんな事はあり得ん」

ヤスキ将軍は信じられない様子だ。


「さぁ、祭りだ!ぐびっ」

酒呑童子は左手の徳利に入った酒を飲む。


「者共!出て来い」


酒呑童子の周りに5つの魔方陣が浮かび5体の鬼が現れた。


「茨木童子、星熊童子、熊童子、虎熊童子、金童子、蹂躙だ!」


5体の鬼は謁見の間にいた騎士や貴族達を金棒で潰し、喰らい始めた。


その後も5つの魔方陣から次々と鬼が現れる。


土蜘蛛と鬼達が騎士や貴族達を殺し、又は生きたまま喰らい、謁見の間は阿鼻叫喚と化した。


「取り敢えず、国王と宰相、将軍と錬金術師は捕らえて連れて来い。」


ドーマンの命令に、土蜘蛛達が国王とミワタ宰相とヤスキ将軍を、糸で雁字搦めに拘束し引き摺って来た。


「ひぃ。な、何をする?」

「無礼者、は、離せ!」

「ぐぬぬ、化け物め、止めろ!」


「ケンヤと申す帝国の輩が見えませんな。」

ドンギュー将軍が、ドーマンに話し掛ける。


「ふふふ、案ずるな。既に我が手の者が向かった」

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