第6話 逃亡

ハルトはオーク兵に槍を突き刺した。

しかし、オーク兵は重く筋肉は厚い、突き刺した槍を引き抜こうとするが、動かない。


「ぐぉ!貴様ぁ!」


バキッ!


振り返ったオーク兵の力と重さでハルトの槍が折れた。


「ちっ、ダメか!」


ハルトが生き残っていた理由の一つに、判断の速さもあった。


ただ一つしか無い武器が折れたのだ、これ以上攻撃は出来ない。


ハルトは振り返ると走り出し、味方の槍を拾うと脱兎の如く逃げ出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ドーマンは、もう3体の妖怪を召喚した。


1体は白澤はくたく

白い牛の身体に人間の顔、白いたてがみに白く長い顎髭、顔の目は3つと頭に牛の角、胴体の左右に3つの目がある。万物に精通した妖怪。


残り2体は野箆坊のっぺらぼう

中肉中背の人型だが、目鼻口耳の無いのっぺりとした顔に服を何も着ておらず。身体も乳首、臍、生殖器が無く凹凸が無い不思議な身体だ。


のっぺらぼうは無言で、おとろしに捉えられたドンギュー将軍と、ヤマツ枢機卿の前に立つ。


「ひぃ。な、何だこのモンスターは? ば、化け物ぉ!」

「気色悪い。俺達をどうする気だ」


「この世界の事を色々教えて貰おうか。のう、白澤よ」


「そうじゃのう。万物に精通する儂じゃが、この世界は靄が掛かっておる様じゃ」


ドーマンの問いに心を読んださとりが答えていく。


時折、白澤からも質問を行い、ドンギュー将軍とヤマツ枢機卿の知っている事でドーマン達が知りたい事は粗方聞いた。


「このくらいで良いだろう。のっぺらぼう、やれ!」

ドーマンの命令でのっぺらぼうが、自分の額とヤマツ枢機卿の額を接触する。


「あわわわ、な、何をするのだ……」


すると、のっぺらぼうの顔が、身体がみるみるうちに、ヤマツ枢機卿のものに変わった。


そしてヤマツ枢機卿の顔の目鼻口耳が消えた。


いつの間にかのっぺらぼうはヤマツ枢機卿の服も着ていた。


身体の交換が終わると、おとろしはヤマツ枢機卿を自分の口に入れて、喰らい始めた。


ボリボリッ!くちゃくちゃくちゃ。


それを横目で見ていたドンギュー将軍は。

「ああああああああぁ!すいません!命だけは助けて下さい!何でもします。どうかぁ!命だけはぁ!お願い致します」


突然騒ぎ出し、必死に懇願した。


もう1体の、のっぺらぼうは無言で、ドンギュー将軍の額に自分の額を近付ける。


「ふむ、のっぺらぼう、止めろ。1人ぐらいこの世界の配下がいても良いだろう」


九死に一生を得たドンギュー将軍は、おとろしの拘束を外されると、土下座を続けた。


「ありがとうございます。ありがとうございます」


口元で笑みを浮かべながら、何度も感謝の言葉を告げる。


すると、さとりが喋り出す。

「裏切る気満々です。此奴ら甘いなぁと考えてます」


驚愕し慌てふためくドンギュー将軍。


「そ、そんな事は思ってない!何でも言う事を聞くぞ!」


「そうだろうと思ってたよ」

ドーマンは和紙で出来た人型の式札を、ドンギュー将軍の首の後ろに貼り付けた。


「これで裏切れまい」

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