第3章「部活」

 動物園まで歩きはさすがに辛いので俺たちはバスに乗ることになった。

 バスの中は早くも冷房が入っているのか少し涼しくとても快適だ、もうここに住もうかななどと考えていると直ぐに到着する。


「先行って券買っとくよ」

「ありがとうな裕司奢ってくれるなんて」

「しっかり返してもらうからね」


 そう言い残し走り去る裕司を見送りながら俺たちも歩みを進める。


「清水さんはここら辺よくくるの?」

「いえ、家と反対方向なのであまりこないです」

「そうなんだ……」


 会話が続かない、それに恥ずかしがっているのかまだ声が小さい。

 さてどうしたものか、もっと清水さんと打ち解けなければ今後の部活でもあまり会話できなくなるだろうな……

 しかしすぐに動物園に到着してしまう。


「はい!2人の分のチケットだよ清水さんはいいけど湊はしっかりお金返してよね」

「い、いえそんなの申し訳ないです」

「へーきへーき湊が2枚分払ってくれるから」

「え、何で俺が……」

「部長でしょ、それくらい払ってあげなよ」

「うっ……はぁしょうがないほらよこれでいいか?」

「毎度あり〜」


 こいつには今度何か奢ってもらおう。

 清水さんは……やっぱり申し訳なさそうにしているか。

 

「あれ?中こんな感じだっけ?」

「この間改装したってニュースやってたよ?見なかったの?」

「へーそうなのか見逃したのかもな……」


 俺たちは向かって左から回ることにした。

 初めに猛獣かボリュームがすごいな…カメラ片手に俺たちは網に張り付くように中を覗く、どうやら寝ているようだ。

 パシャリと1枚撮り次へ向かう。

 その後も何枚か撮るがやはりいいものは撮れない。

 動物園は失敗だったのかな…


「よし!次は動物と触れ合おう!」

「あぁ、あそこ行くか」


 そこは小動物と触れ合える場所で子供たちに大人気だ。

 今日もたくさんの子供が小動物と触れ合っていた。


「さて、何を撮るか……ん?清水さん?」


 彼女は先ほどの川の時同様に目を輝かせていた。

 さては小動物大好きだな。


「清水さんはどの動物が好きなの?」

「私は……ハリネズミが好きです」

「ハリネズミか可愛いよね」

「はい!あの小ささも可愛いですが何よりも人に懐かないところとかがもうすごく可愛いんです!」


 余程好きなのか今日1番の喋りだ。

 清水さんのストライクはハリネズミだったらしい。

 その後も清水さんのハリネズミトークは終わらない。


「じゃあハリネズミを撮ろうか」

「あ、すみません私ったら長々と喋ってしまって」

「いや、ハリネズミのこと詳しく知れて楽しかったよ」


 確かにハリネズミが好きになってしまうような話だった。

 それほど熱心に話していた清水さんはハリネズミをより可愛く撮るため試行錯誤していた。

 この横顔撮ったら清水さんまた怒るかな……まぁそれでもいいか


「よし、じゃあ動物園で撮った写真は週明け部活で見せ合うことにしよう。それまでSDカードを無くさないようにね!」


 2人と別れ家に帰った俺は早速自分のPCに今日の写真を取り込む。

 なんか俺清水さんばっか撮っちゃったな……ストーカーとかと間違われたりしたら嫌だな。

 まぁその時はその時今は気にせずもう寝よう……


 週明けまた何も変わらない学校生活が始まる。

 月曜日なだけあってクラスメイトたちも少し気が沈んでいる感じだった、1人を除いては……


「おっはよ〜湊〜いい朝だね〜」

「はぁ〜何でお前はそんな元気なんだよ……月曜日だぞ?」

「月曜日……あ!今日はジャンポの日じゃないか!湊教えてくれてありがとう」


 裕司はどこかへ走り去った。


「まさかあいつ今からコンビニ行ったのか?もうホームルーム始まるぞ……」


 結局裕司は1時限目が始まる頃に帰ってきた。


「いや〜危なかった〜まさか1時限目にまで送れそうになるとはね」

「俺は何となく予想できてたよ」

「まさか湊ってエスパー?」

「常識人だよ」


 昼休み俺は教室で裕司と共に食事を取る。

 裕司は飯を早々と食べ終わり先ほど買ってきたジャンポを読み始める。


「今週号はどうだ?」

「ん〜?いい感じだよ特にカンピースはいつもながら最高だよ」


 そのまま裕司は漫画へとどっぷり浸かって行った。

 昼休み、5、6、7限が終わり各部活が始まる。

 俺は慌てて荷物をまとめる裕司を横目に先に部室へ向かう。


「今日は俺が一番乗りっと」


 窓を開け掃除を始めるこれはもう俺のルーティンと言ってもいいだろうな。

 そうこうしていると裕司、清水さんそして最後に撰原先生が続々と入ってくる。


「はい、じゃあ部長早速初めてよ」

「はいはい、じゃあ早速こないだ撮った写真を見せ合おうか。っとその前に今日は初めて顧問らしいことをしてくれた撰原先生に皆お礼を」

「ありがとうございますえりちゃん先生」

「あ、ありがとうございます」

「うむよろしい!いや〜初めて顧問やってるわ〜私」


 裕司と撰原先生が声を上げて笑う。

 この2人そっくり過ぎだろ、うるささや行動がもう嫌


「よし、じゃあ先生早速プロジェクターの接続してください」

「はいよここがこうで……はいできた」

「じゃあ誰から行く?」

「はい!僕からやりたい!」

「オッケー裕司から時計回りで行こうか」


 先生のPCに裕司のSDカードを差し込み読み込む。


「ますばこれが見せ合いした写真で、あったこれこれ動物園で撮った写真!」

「何というかこれも普通だな」

「い、行積さん私はいいと思います……」

「ん〜やっぱり私写真よくわからないや」


 結局裕司の写真はどれも酷評だった。


「じゃあ次は清水さんだね」

「は、はい」


 PCは使い慣れていないのかあたふたしながら準備していた。


「で、出ました。えぇ〜と……これが動物園の写真です……」

「あれ?全部ハリネズミ?」

「ハリネズミだね〜」

「ハリネズミね」

「可愛かったので……つい……」


 清水さんの写真は結論可愛いで幕を閉じた。


「はい、じゃあ最後湊ね」

「もう準備できてるから早速行くよ……」

「これは〜清水ちゃんばっかじゃん」

「先生そこ触れちゃダメですよ」

「何でよ」

「ほら」


 裕司の指の先には耳まで真っ赤にした清水さんがいた。

 やっぱりか、やめといたほうがよかったかな……


「清水さんあの……ごめんね……」

「いえ、あの……その……ごめんなさい」


 気まずいな……


「よ、よし!これで取り敢えず課外活動は終わったわけだけど今後何かやりたいことある?」

「はい!部活動紹介の写真を撮って欲しいです!」

「それ、先生が面倒くさいだけでしょ」

「活動は活動よ!じゃ頼んだわよ〜」


 撰原先生は颯爽とさっていった。


「ってことなんでやるしかないみたいだね……」


 こうして俺たちは各部活を回り写真をとることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魅せる世界の写り方 加賀谷将隆 @kagayamasataka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ