第15話「ファミリーのサイキック」

「あん?」


 一瞬、ジャックは何が起きているのか理解できなかった。


 精神操作マインドコントロールしていた敵兵の接続が切れたのだ。唐突に。


 敵に殺されたわけでもなく、自殺命令を出したわけでもないのに、駒の反応が無くなった。

 ジャックがどう働きかけてもウンともスンともいわない。


 しかも、それは一つの駒に限ったことでは無かった。


 二十人ほど精神操作しておいた敵兵の反応が次々と消えていく。


 ものの一分もしないうちに半数以上の手駒を失っていた。


「クソッ! あっちで何が起こってんだよ?!」


 ジャックは千里眼クレヤボヤンスを使い、まだ反応のある駒の視界を借りて周囲を見回した。



 ……精神操作されたファミリー構成員の一隊が、銃を携えて進軍していく。



 そのとき。


 一人の構成員の背後に向かって、ユウが空中から飛び掛かった。


 ユウが左手を構成員の頭に押し付ける。掌から電光が迸るほど強力な精神感応テレパシーを放つ。


 精神に過負荷を掛けられた構成員は気を失うことになり、ユウは頭から左手を離した。


 しかし精神操作された他の構成員に気づかれる。ユウのほうへ銃口が向けられる。


 ユウの瞳が――真っ赤に光り輝いた。


 瞬間、構成員たちの持っていた銃がバラバラに『分解』される。攻撃手段を失い、狼狽する構成員たち。


 間隙をつき、ユウが瞬間移動テレポーテーション。今度は真正面から構成員の頭を掴み、精神感応を放つ。気絶させる。


 その間に他の敵は肉弾戦をすることに決めたようだ。最後に残った二人がユウに向かって突進してくる。


 接触の刹那、ユウは二人の背面に瞬間移動。右と左の手で片方ずつ、同時に頭を掴んで精神感応テレパシーを放った。


 最後の二人が気を失い、バタリとその場に倒れる。


「……終わりました。保護してあげてください」


 ユウは後ろに待機させていた山内キンジを振り返った。


「本当に仲間を全員救ってくれるなんてな。恩に着る。いくら感謝してもし足りないよ」


「まだです。ジャックを止めない限り、同じことになります」


 そうだね、とキンジはユウの姿を複雑な思いで見つめた。


 自分と比べればずっと若い少年。体格も平均程度で、むしろ線が細いほうだろう。

 超能力という強力な力を持っているのは今この目で見て知っている。しかし、腕に巻かれた包帯は痛々しく、保護すべき子供であるという印象は拭えない。


 そして、その少年に兄弟殺しを頼まなければならないのが、大人として人間として情けなかった。

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