第4話
「……あれ、お母さんは? 」
オバサンはレーフラの方を見てそう言った。私が魔法で私のことがオバサンの母親に見えるようにしたの。だぁい好きなお母さんが目の前にいたら、少しは集中が切れるでしょう? 私はそれを利用した。
「クミュー、一般人を巻き込む子はタブーよ。とりあえずこのヤミを解除してほしいの、私からも謝るから」
「あ、ごめん」
案外素直にヤミを解除してくれたわね。ここから口論になることを予想してたんだけど。
まあ、私はこれから『S』と大事な大事なお話をしなくちゃいけないから。
「ねぇ、そこの頭おかしい代表『S』さん」
「誰が頭おかしいだと? 」
頭おかしいで反応したってことは自覚があるのかしら。と言ってあげたかったところだけど、これ以上このお店に迷惑かけたくないし、やめておいた。
やっぱりあの仮面ダサいと思うわ。
「帰って。『S』は知らないと思うけれど亡くなった前の代表とは一般市民を巻き込まないということで約束していたの。これは許すわけにはいかないことよ。で・も、今回だけは特別に見逃してあげるから、早く帰りなさい」
私は睨んだ。元々目力には自信があったから『S』は少し怖かったかもね。私にもレーフラみたいに丸い目を持ってればねとは思うけど、独り者のレーフラと違って裕希がいるからそこまでコンプレックスでもないわ。
たったの齢14の女の子が睨んだだけでそんなに怯えなくていいじゃない。
後ろに下がり、逃げるように喫茶店から出てどこかに去っていった。お店の人に謝罪の一つでもしなさいよ。
「……あれ、私おいていかれてない? 」
「忘れられてたか余裕がなかったな」
「クミュー、ちょうどいいわ。これを魔法使いの世界に持っていって頼んできてもらえるかしら? 」
哀れにも取り残されたクミューに私は小さな紙を渡した。その紙には修理の要請が書かれている。私たちの魔法では直せないから魔法使いに頼んでこの喫茶店を直してもらう。
人的被害が出ていないとはいえ、これでごめんなさいと謝って帰るのはダメでしょ。窓ガラス三枚破損、窓際のテーブル席一部破壊、皿ざっと数えて30枚破損。ついでに私のフレンチトースト冷めた。
「私の出禁食らってるのよ? 」
「私たちの名前を出して。そうすれば入れるはずよ」
「私ら優秀だからなぁ」
「レーフラは物理的に強いだけでしょ」
私たちは無理矢理クミューに紙を押し付けて魔法使いの世界に向かわせた。帰ってくるまで私たちは待機。人間の目は痛いし、この格好もう嫌だから着替えたいけれど、帰ったら変な噂が広まるんだろうなぁ。
「なあ、ブルーナ。着替えたい」
私がたった今着替えられないなと判断したばかりだというのに、どうしてレーフラは小声でもそういうことを言ってくるのかしらね。
「いいけど、着替えてみなさい。人間の姿見られたら特定されて噂されてドンよ。今着替えるのはやめなさい」
「正体隠さなくていいのに~? まあ、魔法少女全体で悪い噂がたって魔女狩りみたいなのが起こったら困るし、別にいいか」
動く赤いキョンシー人形が……。確かに正体隠さなくていいし、存在は一般常識になってはいるけれど変な目で見られることには変わらない。普通に人間の姿で制服に袖を通しているときにまで魔法だの何だの言われても、ね。使えないわよ。
「遅くないか? 」
「月の裏側だもの。まともな魔法が使えないで
「その魔法少女公共交通機関って言うのやめねぇか? 長ったらしい」
「じゃあ
魔法少女公共交通機関とは、月の裏側にある魔法使いの世界に行く術を持っていない魔法少女が魔法使いの親に会ったり、近状報告をするためだけに魔法使いの技術者が作った魔法少女のための移動手段である。
って魔法使いの親に教えられたわ。私もよく使う。略称は魔公交通。言いにくいから私は魔法少女公共交通機関っていってるけれど。
「それに+で出禁だから交渉時間かぁ。日付変わる前に布団に入りたい」
「わがまま言わないの。私だって明日のデートに備えて早く寝たいわよ」
つい忘れかけちゃってたけど明日祐希とデートじゃない。クミュー早くしなさいよね、明日寝坊しちゃうじゃない。
「あー、ブルーナは帰っていいぞ。裕希に迷惑かけたらあれだろ? 怒るだろ」
「レーフラだけじゃ不安だから平気よ。それにどうせこの事は祐希の耳にも伝わるだろうから裕希ならわかってくれるわ」
明日の寝坊よりここで帰って何か問題が起きる方が怖いわ。どうせ来るのは私の親。頭を抱えたレーフラの親と並んでくるに決まってる。そこに私がいなければ怒られるでは済まないでしょうね。そっちの方がデートがつぶれる可能性が高いわ。
「『
「『
それぞれお互いの親の話を始めた。それで忘れていたのだけど、一般市民が全員この店から逃げていた。私たち着替えたり帰ったりしてもいいんじゃないのかしら。
魔法少女の恋人 影山美桜 @miou_kage
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