人一人

「何言ってるんだジャスティス…冗談はやめろよ……」




 俺はふらつき、足を一歩引く。




「私の言葉を疑うことはできないのになぜそんなことを言うのですか?」




 そ、それじゃあ騙していたのか俺たちを…




「そうですね、しかし世界を救うという言葉は嘘ではありません」




 どういうことだ




「一つずつ説明しましょうか。時間もありますし。10年前、カオルが倒し損ねた前魔王は神の世界に侵入しました。その時、前魔王は神になり、神だった私は魔王に堕とされてしまいました」




 …その時は世界は滅ばなかったのか…?




「滅びました。そしてすぐに魔王だった神が作り直したのです」




 それで、お前はどうするつもりだ




「無論、神の座を取り返しに行きます。そのためにここまで来たのですから」




 …聞きたいことがまだある。俺は3時間前に転生したよな。もしそうだとしたら、矛盾が生じるんだ。

 俺が目覚めたとき、俺はヒーナの家のベットで寝ていた。時間を確認すると約3時間前。でも、ヒーナは森の中で俺を見つけたといっていた。1分ちょっとで森の中で寝ている見ず知らずの男を家のベットに移動させるのはありえない。物理的にも心理的にもな。




「そうですね。貴方は本当は3年前には転生していました。そして3時間前に目覚める。これは予定されていたことです。3年間私があなたの身体の保管を管理して、昨日貴方を森の中に置いてきました。ヒーナという少女はこの季節には毎日あの森の薬草を取りに来ますからほぼ確実に発見されます。


 それと目を覚めた直後に自分自身の声を聞いたはずです。あれも私の工作です。神の声でなくとも思い込みで信じてしまうのが人間の長所であり短所なのです」




 なんでわざわざそんなことをした




「貴方には何も知らずにいてもらう必要がありました。よって神の手違いで3時間前に転移したということにしたのです」




 何も知らずにだと?教えてくれればよかったじゃないか。そうすれば何か他の方法が…




「長い時間この世界にいると貴方は気づいてしまうでしょう。この世界の真実に。そして貴方は絶望する」




 真実だって?滅亡寸前の世界以外に絶望的なことなんてあるのかよ








「この世界は貴方の内面世界なのです」


「……は…?」




「10年前、貴方は思春期が終わる頃でした




 3年前、貴方は麻薬に手を出しました




 そして3時間前、貴方は首を吊りました」




 だから…なんだよ……




「10年前、神が交代しました




 3年前、貴方の意識のない体がこの世界に召喚されました




 そして3時間前、貴方はこの世界で目を覚ましました」




 そんなの…ありえないだろ……これは夢か…?




「ええ、夢です。この世界は貴方が持っている思想で混沌としている世界。そしてそれらを束ねて現実世界での行動を決定するのが神の世界。人は死ぬと魂の殻に閉じこもり内面世界で過ごすのです。つまりここは俗にいう死後の世界ですね」




 …お前は…誰だ……






「私は貴方です」




「そして10年前に捨てられた幼稚な正義感です」






 残り10分00秒
















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