進行

トータルさんに乗って移動している時セントウはこんなことを言った。




「…ドラゴンを実際に見たけれど…やっぱり彼は怒っていた……死んでもなお…許せないことが…あった………」




「…ドラゴンを最も怒らせることは秩序を乱すこと……」




 それはやっぱり魔王なんじゃないか。だって今にも世界を滅亡させようとしてるんだから。一体どんな奴だろう。


 カオルは記憶はなくしているけど、ソードは会ったことがあるはずだ。




「とてつもない魔力を持っていたわ。さすが魔王と言ったところね」




 外見的特徴を聞いてみると、不思議そうな顔をされた。




「外見なんて魔法でどうとでもなるでしょ」






 そうこう言っているうちに目的地に着く。そこは灰色の氷のように真っ平らな地面がひたすら地平に続いているだけだった。




「ここでは一切魔法を使えません」




 ジャスティスは当たり前のようにさらりと言う。




「ここ『無量の地』の中心には魔王城があります。走っていくしかありませんね」




 嘘だろ…ここからは果てしない地平しか見えない。




「しかし、私たちにはマサヨシ様とセントウさんがいます。二人とも皆を抱えて魔王城まで飛んで行ってくれませんか」




 横を見るとトータルさんが倒れて微動だにしていない。




「トータルさんは全て魔力で動いてますからね。しかし、おいていくわけには行きません。まだ役割が残っています」




 あまりにも説明がなさすぎるが、仕方がない。あと一時間を切っている。


 俺は早速魔法壁をカゴのように使い、皆を乗せてジャスティスが命じた方角に向かって飛び立つ。




 さらに移動中、ジャスティスが出発前は省いていた説明を大雑把にしてくれた。




「『無量の地』とはドラゴンと精霊が守護する聖地です。ドラゴンが外側から守り、精霊が内側を守る、私たちはドラゴンを完全に消し去ることで内側に入ることが出来ました」




「内側では精霊が魔力の使用を制限しています。しかし精霊を経由しないドラゴン系統属性の魔力ならば魔法を使えることが出来ます」




 なんでそんなところに魔王城があるんだ?




「魔王城があるというというよりは、そこにあるモノがあるから魔王がそこに城をつくったのです」




 あるモノ?




「神の門です。だからドラゴンと精霊が守り、聖地と呼ばれています」




「つまり魔王城とは神の門を開くための研究施設のようなものです」




「しかし、マサヨシ様がドラゴンの力を手に入れたのは嬉しい誤算でした。セントウさん一人に任せるのより魔力の消耗は少なくなるはずです」




 それよりトータルさんはまた動くようになるのか?




「大丈夫でしょう。神の門付近は精霊の干渉はありません。神の世界に通じる入り口でさえ恐れ多いものですから」






 だいぶ時間が経った。体が重くなり、息が切れてきた。セントウも汗でびっしょりと濡れて目をつむっている。誰だ消耗は少なくなるなんて言った奴は。こんなのセントウ一人に任せるわけには行かないだろう。




「あ、見えましたよマサヨシ様。あと少しです頑張ってください」




 苦しくて顔を伏せていたが、気づくと数キロ先には巨大な山のような西洋風の城がそびえたっていた。








 残り44分17秒


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