落柄婦

カオルの召喚した4人少女たちはセーラと同様にカオルに肉を取り込まれ、背骨は剣に変形する。それらの剣は浮遊し、カオルの周りを飛び回る。




 カオルが合図をするように手を軽く振り上げると、4つの剣先はドラゴンのいる方を向き、一斉にドラゴンに突っ込んでいく。ドラゴンは大剣を振って突撃してくる剣を振り払おうとするが、剣は軌道を変えてドラゴンの大剣を避け、ドラゴンの身体に激突する。




 さらに4つの剣はドラゴンの周りを飛び回り、隙を見つけては体を斬りつける。鱗が所々剥がれていく。




 だがドラゴンはその攻撃をものともせずに壁と天井いっぱいまで翼を広げて発光させると、先ほどとは比べ物にならない程の速度でカオルに突進する。




(通常の魔法壁じゃ防ぎきれない!)




 カオルは魔法陣を展開する。そして召喚されたのはまたもや全裸の少女。そしてその少女にドラゴンの大剣が襲う。






 大剣が彼女の身体に触れた瞬間、彼女の身体がはじけ飛ぶ。






 彼女の血と肉はドラゴンとカオルを隔てるように膜を張ったようになる。そして大剣を弾き返し、辺りに血と肉を飛び散らせる。


 ドラゴンはよろめくが、顎を上げ、咆哮を轟かせる。カオルは瞬時に魔法壁を張る。音の振動で辺りの壁や床が崩れ始める。




(音響魔法…複雑な魔法も使えるのか)






 足場が崩れ、しばし落下した後、不思議な空間に出る。凝った柄の手すりのある木階段があちこちに曲がりくねって配置されている。複数の巨大なシャンデリアが吊るされている天井。花柄の刺繍をあしらった赤いカーペットが敷かれた床。さらに空間を所々に遮る壁には多種多様な画風の絵画が金箔装の額縁で飾られている。




 カオルは床にふわりと着地し、ドラゴンは着地寸前一瞬翼をはためかせ、落下速度を殺して床に足をつける。




 ガギィィン!ギギィン!!




 ドラゴンの周りを飛び回っていた剣がドラゴンの大剣で叩きつけられ、粉々にされる。赤い床には飛び散った破片。




(攻撃の速度も威力も徐々に上がってきている…まさかあの魔法を……)




 カオルは一瞬考え事をする。その瞬間を図られたかのようにドラゴンの姿が目の前から消える。




(っ!?しまった!!)




 ドラゴンの気配を感じたのはカオルの真後ろだった。既にドラゴンは大剣を振り下ろすモーションに入っている。




 カオルは振り返り、すぐさま少女を召喚し、血の結界壁で攻撃を防ぐ。


 ドラゴンは大剣をはじかれるが、すぐさま次の攻撃に移る。


 だがカオルもさらに少女を召喚し、攻撃を弾き返す。




 ドラゴンは大剣を振るう以外にも頭突き、拳突き、蹴りなどで血の結界壁を次々と壊していく。そのたびに少女たちの返り血を浴び、金色の鎧鱗は真っ赤に染めあがる。




(概念魔法の一種を使っているな。伝説の扱いになっている神の領域の魔法…。おそらく身体能力が無限級数的に向上する類のものだろう。広域魔法が使えない条件で最適かつ最高の魔法だ)




 カオルは防御用の少女を召喚しつつ、別に二人の少女を例のごとく取り込み、二本の片手剣を両手でかまえる。




(となるとやはり時間はかけられない)




 その剣に魔力を込め、青白く発光させる。




「ジャスティス様に誓って!死竜を討伐してみせる!!」






 残り1時間7分49秒




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