玩具の悪戯
「時の流れが元に戻りましたね。アルティメットさん、うまくやってくれたようです。予定より少し遅れましたが、相手も予定外だったので仕方ありません」
「それよりさぁ、あのバカはどうすんのよ。あんな所に置いて行っちゃっていいのぉ?」
「……心配ありません。あれはただの保険です」
「保険?しかしジャスティス様、ソードは異世界人であるマサヨシ君しか扱えませんよ。自分はもう辞めたので」
「心配ありません」
__________
辺り一面茶色の大地。埃っぽい風が吹き荒れる。俺はそこに一人突っ立っている。
あーあ。何やってるんだろうね俺は。
ジャスティスにたんか切って途中下車したものの何もすることない。このまま1時間半ぼーっとするのか。
………。
俺はしがない一般人だ。だがそれは過去形。3年前、踏み入れてはいけない世界に足を突っ込んでしまった。
大学のサークルの友人に誘われ薬に手を出してしまった。すごいね薬って。絶対はまらない自信があっても一度やったらどんなに高額でも買い続けちゃう。いや~。はは。
それから俺は就職活動なんて身につかず、フリーターで食いつなぐ生活をしていた。
ジャスティスは知っていた。神様だったから当然か。それよりもさっきのジャスティスは…
怒っていたのか。
俺はジャスティスの逆鱗に触れてしまったようだ。俺はジャスティスになんて言ったんだっけ。
………。
まあいいか。どうせ俺はもう何もすることないんだし。このまま空を眺めながら…
あれ?なんかデジャブ?
「…君は……このままでいいの……?」
後ろから声がする。振り返るとドラゴンの巫女のセントウがいた。
「なんでここに…」
「…君を…たしかめに……来た…」
「はぁ…」
「翼が…ほしい……?」
「はぁ?」
「ドラゴンって……何だと………思う?」
「知らねえよ」
「貪り尽くしてしまった……『黒滝のサガザール』…あの地は空っぽ……」
何を言ってるんだこいつ。まるで要領を得ない。
セントウはその場にかがむ。すると彼女の背中から灰色でほんのり発光している7本のポールのようなものがせりで出ていく。30メートルほどまで伸び、それは無数に枝分かれして、やがて翼を形作る。
セントウが立ち上がる。みぞおちの少し上から皮を破り、血を出しながら腕が生えてくる。
セントウの体が横に傾く。それを瞬時に脇腹から生えた二本の脚が支える。逆側の脇腹からも一本の脚が生え、地に足底をつける。
セントウは顔をあげる。尾てい骨部分辺りから直径20センチほどのミミズのような尻尾が生える。地に着くほどの長さだ。粘り気のある体液を分泌しながら、うねうねと動く。
セントウは俺をじっと見つめる。そして額の真ん中から三つ目の眼がゆっくりと開く。
「ドラゴンは……秩序を守る存在………巫女は……無秩序を謳歌する存在…」
残り1時間21分49秒
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