極者の戦い 後編

「あ、そうでした。マサヨシ様、左手を見せてください」


「あ、ああ…」




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「予定内です。これは貴方の体感時間を現しています。そして時空の歪みの発生時にサベツの森にいたマサヨシ様の体感時間が本来の時間の流れ。つまりアルティメットさんが死の計約たちを倒せば、その左手の時間が元の時間ということになります」


「それにしてもこんなに時間たっていなかったけ」


「あの森のコダマと話している間は、時間がものすごくゆっくり過ぎていくのよ。あいつらは実体がないから、他人の意識を展開して、姿を映しているわけ」




 そういうことにしておこう。もう過ぎたことだしな。




 _________




 アルティメットは四体の魔物に囲まれて跪いていた。体は小刻みに震えている。はるか上の獣頭から声が降ってくる。




 『我は心を侵す者。汝のもろい心など我の前では簡単に砕かれよう』




 入ってくる…。知らない色が…。まだ名付けられていない怖くて気持ちの悪い色。でも私の色も多分気持ち悪い色。こんなことを考えたことがある。もしかしたら同じものを見てもみんな一人一人違う色を見ているのかもしれない。でも最初の人が「これが赤、これが青」って決めたからみんながそれに合わせている。でもみんなの赤色なのに青と感じる人もいるはずだ。いや、そもそもみんなの色って何?一人一人違う色を感じているのなら、基準なんて誰も決められないはずでしょ?


 それなのにみんなは勝手に良い色と悪い色を分けたがる。みんなは私を悪い色と呼ぶ。なんで?私は自分の色を主張した。それがいけないことなの?


 少年院での監禁生活中、教会の牧師さんが何人も私を訪れ、こう言った。




「自分の罪を悔い、平和のために祈りなさい」




 反吐が出る。私はそんなの塵ほども望んでいない。


 人殺しは重罪?




 そんなこと誰が決めたの?




 みんな周りを囲む価値観が絶対だと信じている。でもそれは妄信。実際は誰もが違う考え方を持っている。セクトに会って私はそれを実感した。工場の歯車で、食事しか楽しみがないと思っていた奴隷の少年はその食事を犠牲にしてまで自分の考え方を貫こうとした。奴隷でさえそれを持っていた。


 私はセクトの分までそれをないがしろにしないようにするって決めたんだ。それは絶対譲らない。


 ジャスティスさんもそれをおびやかそうとしているの?ジャスティスさんは私を罪と言った。あの牧師たちと同じだ。




 違う!!




 ジャスティスさんはあんな奴らとは違う。うすうす気づいていた。あの四体の魔物は生きている。魂の鼓動が肌を通して伝わってきた。


 罪の償いなんて建前。トータルさんに封印を解除してもらってもあの魔物たちには勝てない。この身で思い知った。ならば…




 さらに魂を開放するしかない。




 他の種族を侵す楽しみを教えようとしているんだ。いや、それ以外の何かかもしれない。確かめたい。




 私はここで絶対終わらない。むしろこれから始まる。




『これは刑だ。汝の苦しみを永遠とするがよい』




 アストラエルが私のみぞおちを殴る。




「がぁっ!!」




 さらに私は殴りつけられる。




『むごたらしく死んでもらおう』




 その時、私はアストラエルの腕をつかむ。彼は驚いたような表情を見せる。




「お前がな」




 _________




「そういえば俺たちはこのまま魔王城に直行してるのか?」


「いいえ、それはできません。ドラゴンの許可を取らないといけないのです。そのためにまずドラゴンを信仰する獣人たちの村に行きます」




 ジャスティスは頭の上にちょこんと手を掲げ乗せる。




「猫耳、ウサギ耳などがいるんですよ。お好きじゃありませんか?」






 残り1時間44分03秒

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