極者の戦い 中編
死の計約ってのはそんなにやばい奴らなのかよ。
「いやぁ、彼らは手ごわかったよ。ねえソード?」
「え、ええ。斬りごたえのある連中だったわ。カオルが魔王相手以外で死闘をしたのよ。もちろん一対一でね」
ソードは変わったというカオルに慣れないようだ。それより街を襲った魔獣どもに圧倒的な力を見せつけたカオルが苦戦するほどの奴だと?それが四体もいる。
「それに」
ジャスティスが口を開く。
「『死の計約』…それは天使を殺して魔王から魂を授かった特別な魔物です。彼らの怨念の強さを甘く見ていました。巨大な闇の魔力に付け込んで復活したのでしょう」
「それって…」
「はい。アルティメットさんが彼らが生きていることに気づいてしまったら、彼女は『死の計約』たちを殺せません」
なんてことだ。かなり絶望的なんじゃないか。だがソードはあきれるように言う。
「あのねえ、戦いってのは命の取り合いなのよ。お互いが恨みあっていようがどんなに醜い理由で争っていようが命を賭けて力をぶつけ合う。それが美しいんじゃない」
「しかしまあ、アルさんを信じるしかないですね。私たちはもう何もできませんから」
「おいおい、そんな適当でいいのか?」
「マサヨシ様は合理的な対処法を求めているのですか?数的予測にとらわれすぎると破滅を招きます。時には希望的観測の方が役立つときがあるのですよ」
胡散臭い新興宗教かよ。しかし元は神様だった奴が言うと少し信憑性がある。
やがて四体の魔物が言葉を発する。
『我は第十七天使オリエルを討ちし者、蟲の杭アカラ』
『我は第九十七天使トエルを討ちし者、鉄の子サンダトーン』
『我は藍の原初天使を討ちし者、獣審ガル』
『我は闇の底に堕ちし堕天使、第二天使アストラエル』
喋れるのかこいつら。礼儀正しく自己紹介をしたと思った途端、一斉にアルに襲い掛かる。
アルは彼らの攻撃をするりと避けていき、ガルの背中に一気に駆け上る。明らかに生き物の速度じゃない。そして毛皮に手を衝き込み、はぎ取ろうとする。体内に侵入する気か。
その瞬間、アルの体が吹き飛ばされる。アストラエルがアルの脇腹に蹴りを入れたのだ。そして翼を広げ宙に浮いている。
『魂を開放せし者よ、汝の力は強大であるが、それを支える器が歪過ぎる』
地面に落ちたアルをサンダトーンがハンマーで叩きつける。地面が砕け散る。
『その形は俗に臆と言う。異魂に怯えて未来を冒せずにいる』
アルはハンマーを持ち上げる。さらにアカラの小さい触手の一本がのたうったのち、アルの胴を一直線に貫く。爆風で辺りの草木が吹き飛ぶ。
『臆病者には罰を。この世で唯一の罪を背負っている』
そしてアルの目の前にガルの巨大な目が出現する。アルの顔が歪んでいく。
「何これ…私の心…私の黄色…私の恋…」
アルが固まったまま、何かをつぶやく。
『汝は我らを超えられない』
これは…どうにかなるのか。
「ここからは危険地帯です。警戒しなければなりません。水晶玉をしまいますよ」
「なっ…!」
「さっきも言いましたが、彼女を信じてあげてください。私たちは彼女の努力を無駄にしないように行動すべきです」
ジャスティスは水晶玉をしまう。あたりを見渡すと、黒色の岩山が広がっている。
「なら一つ聞かせてくれ。天使ってなんだ?」
「女神サテラの使いです。神といっても私と違い、この世界に実在した人物です。永遠の平和のために概念化しました」
「その女神と対立するのが魔王ってわけか」
「察しがいいですね。また、多くの人間はサテラの教えを信仰しています」
「そういえばあの黒い翼の奴、堕天使とか言っていたが…」
「アストラエルのことですか。ある魔人に恋をして、魔王と契約して魔族に身を堕としたそうです」
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