極者の戦い 前編
アルとはもうおわかれ?何を言っているんだこいつは。
「アルティメットさんが魔物を相手している間に、私たちは魔王城に向かわなければなりません」
「ちょっと待てよ!全員で協力して倒した方が効率がいんじゃねーの?」
「他のメンバーはまだ力を消耗するわけにはいけません。貴方たちにはしかるべき状況で力を発揮してもらいます。」
「そうはいっても…」
「それにこれはアルティメットさんに罪を償ってもらうためでもあるのです」
「というと?」
「彼女は自分の欲望を満たすために命あるものを傷つけた。ではその償いとして、他の者のために肉の塊と傷つけあってもらいます」
アルは顔を伏せたままだった。やがて決心したかのように声をあげる。
「私やります!皆さんは先に行ってください!」
「よく言ってくれたアルちゃん!ウチも力を貸すよ!」
トータルさんはアルの言葉を聞いた瞬間、嬉しそうに言う。
「アルちゃんの力のほとんどをウチが封印してたんだっ。それを解いたら、アルちゃんはきっと成し遂げられるよ!」
「それではさっそく魔物を召喚しましょう」
こんなとんとん拍子で進んじまっていいのか?ジャスティスは杖を掲げ、トータルさんは布のようなものに変形し、アルに覆いかぶさる。
「ぐぅっ……があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アルが苦しみだす。
「おっおい…大丈夫なのか」
「トータルさんに任せておいてください」
やがて、トータルさんがアルから離れる。
「お待たせ~」
「これ…私…」
アルの赤い髪がさらに血のように真っ赤になっている。また、腕には幾何学的な模様の刺青が入っている。
「んん~封印の影響が体に出ちゃってるか~。その模様は魔法陣のものだねっ」
「もう召喚できます。アルティメットさんは準備してください。私たちは行きますよ」
「短い間でしたがお世話になりました皆さん」
本当に短い間だった。出会ってから一時間ちょっとしかたっていない。
しかしこいつは本当にこれでいいのか。大陸破壊レベルの化け物とこれから戦うんだぞ。
「大丈夫です。これは私の戦いなんです。ジャスティスさん、このような場を設けていただき、ありがとうございます」
「例には及びません。それでは魔物を召喚します。そうしたら早く行きますよ」
もしかしてジャスティスはあせっているのか?今までこいつの予定どうりに進んでいると思っていたが。
そしてジャスティスは杖を地面に向けると陸上トラックほどのドでかい魔法陣が展開される。魔法陣なんて生まれて初めて見たが、アニメとかでイメージできるものまんまだ。
「ここにいると巻き込まれます。トータルさん、出発してください。」
「かしこまり~」
「いってらしゃい」
アル以外の皆はトータルさんに乗り込む。アルはこちらに手を振り続けている。
「マサヨシ様、早く乗ってください」
「あ、ああ…」
「そんなに心配ならこの水晶玉で離れてても様子がわかります」
ジャスティスはどこからともなく青い水晶玉を取り出す。するとそこにアルの姿が映し出される。それで安心したわけではないが俺もトータルさんに乗り込む。
「それじゃあ言ってくる。元気でな」
「そちらこそお元気で」
こいつとは一刻も早く離れたがっていたが、こんな別れ方だとなんだかそんな気は起きなかった。
トータルさんが加速していく。アルはあっという間に小さくなった。俺たちは水晶玉をのぞきこむ。
「魔物がでてきますよ」
「魔族ってのはどんなのがいたのか?」
「有名なのはゴブリン、オーク、魔人、魔獣、悪魔ですね。それらの特質が混ざり合った魔物になるはずです」
魔法陣から四つのうごめくものが出てきた。
一つは全長100メートルほどの金色の大ムカデ。頭に光輪が浮いている。
一つは鉄の兜をかぶった機械人形。ドでかいハンマーを持っている。
一つはそれらとは比べ物にならないほどの大きさの狼。一つの山のようだ。
そして最後に黒い翼を生やした褐色肌の人間。長髪の男だ。
「…!!彼らは……!」
カオルが驚いたようにつぶやく。
「これは…予定外です」
ジャスティスの予定外?
なんだか嫌な予感がしてきた。
「『死の計約』たちが具現化しましたか…しぶといですね彼らは…」
残り??時間??分??秒
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