彼は無能だ 中編
2-00-08
まもなく残り2時間前になろうとしたところで異変は起きた。
辺りの木々の幹からなにやら結晶状の物体がメリメリと這い出てきた。
「今度はなんだ…?」
「始まる…コダマたちの『裁判』が…」
やがて結晶どもは人のような形になる。太った幼児のようだ。
そして甲高い声を発する。
『キライ、あなたたちキライ』『キライ』『キライ』『キライ』…
トータルさんは彼らに話しかけようとする
「君たちソードちゃんはどこにいるのか知らないっかな~」
『あなたナンデ黒いの?』
「どういうこと?」
『黒は汚れの色、悪の色、この森にふさわしくないでしょ』
俺も口をはさむ。
「お前らの中にも黒色の奴がいるじゃないか」
『同じ色でも意味がチガウ、彼の色は高貴の色』
『そんなこともわからないの?』
『アタマ悪いなぁ』
『無能ダネ、何も考えてない』
『無能と汚物はこの森からデテイッテ』『デテイッテ』『デテイッテ』…
なんだこの森は…二度と出れない迷いの森みたいなものなら想像できたが、この森は逆だ。勝手な言いがかりをつけて侵入者を追い出そうとしている。
__________
「アルちゃん、おなかすいてないか?」
カオルは干し肉を差し出す。
「いえ、私お肉は…、それより、ジャスティスさん私たちは何もしなくていいんですか?」
「ええ、私たちは待つしかありません」
「状況ぐらい説明してくれてもいいじゃないですか」
「………」
「ジャスティス様、一人で抱え込むのは失敗の前兆ですよ。貴方は今ただの人間なのですから」
「…この無差別な時間振動はサベツの森の仕業ではありません」
「時間振動?」
「この時計を見てください」
ジャスティスは懐から携帯時計を取り出す。針がありえない速度でグルグルと回っている。
「時間の流れがぐちゃぐちゃになっています」
「で、でもなんで私たちは何ともないんでしょう…」
「私たちも影響を受けています。気づかない程度ですが。しかし、森の中は通常通りの時間が流れています。彼らはすべてを拒みますから」
「んん~??}
「あまり理解が及びませんが…、サベツの森のせいでないなら原因はわかりますか?それともジャスティス様にとって予定外ですか?」
「予定どうりです。」
ジャスティスは当然のように返す。
「魔王の儀式進行によって全ての魔族の瘴気が共鳴して、時空すらも歪ませているのです」
「これが魔族を絶滅させなければならない理由です」
残り?時間??分??秒
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