ばかやろう 後編
異様な光景がひろがっていた。
魔獣どもが街を壊し、所々に黒くて丸い物体が無数にあった。
「あれはトータルさんです。中には街の住民が入っています。分裂できるそうです。最初の爆発の時には既に分裂済みでした」
ギュアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!
見上げると翼を持ったドでかい魔獣が暴れていた。しかし様子が変だ。よだれをたらし、苦しそうにしている。しばらくするとバランスを崩して街に落ちてきた。
轟音で大きめの建物を三つほど壊し、おとなしくなったと思えば、なんと体内から何かを背負ってアルが出てきた。
「あっ、起きたんですね。よかった~」
あの~……あなたは一体何を背負っているんですか…
「これはあの子の脊髄ですよぉ。さっき私言ったじゃないですか。人以外は殺せないって。魔獣は臓器や脳みそを傷つけない限り死なないですからね」
「だって殺すのなんて残酷すぎます…どうせ殺すなら仲間同士でやるべきです…誰かを巻き込むなんて私できませんっ!」
アルはミュージカルの大げさな演技のように両手を掲げる
「マサヨシ様、どちらに行かれるのですか?危ないのでここから離れないでください」
こんな奴と一緒にいる方が危ないだろ!
「安心してください、アルさんは首輪をしているでしょう。あれは私の判断でいつでも爆発させれます」
怪獣と空中乱闘している奴に小型爆弾が効くのか疑わしい。
「だっ、大丈夫ですって。私…、実は魔獣に一人で立ち向かうマサヨシさん…かっこいいと思っちゃいました」
アルは顔を赤らめ、俺に近づきそっと耳打ちする。
「私たち、『仲間』ですよね」
先の顔面衝突よりも命の危機を感じた。身震いが止まらない。
ジャスティスが声をかける。
「…どうかしましたか」
「べっ、別に何も…、そっ、それよりどうして俺は無事なんだ?」
「トータルさんが魔法で治しました。即死レベルのけがだったのですが、さすがですね」
「そうか…あとで礼を言わないと」
「あっ、ほらみてください。カオルさんですよ」
アルが指差した方向になにやらぼそぼそと口を動かすカオルが見える。呪文でも唱えているのか?
するとカオルの周りに半透明の西洋剣が無数に浮かんできた。
「出力0.7% 剣子の舞!!」
そう言い放つと無数の剣が次々と魔獣共を追尾して貫いた。
魔獣共はあっという間に全滅した。
「強すぎる…」
ジャスティスが俺の驚嘆の声に反応する。
「強いだけなら良いのですが」
残り2時間11分34秒
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