ろりこんやろう

残り2時間52分19秒




「貴方、今諦めかけていませんでした?」




「おほんっ、ここはひとつやる気を出させてあげましょう」




「私は王国の騎士長です。これは王国からの正式な依頼です」




「『魔王討伐の暁には特級貴族の地位を与えよう  ログ王国国王 セイバイ・ログ・ハルセント』


つまり魔王を倒せば王国お抱えの貴族になれるのです。貴方のもとには世界を救った英雄として財宝や女が湯水のように流れ込んでくるでしょう」




「どうです?あと数時間、がんばってみませんか?」




 腹が立った。なぜ幼女に冷たい目で見降ろされながらこんなことを言われなければいけないのか。こいつは俺が勇者であることを知っている。だが、こいつは俺をみているのではなくて勇者をみている。




「わかった、やってやるよ、その依頼」




 考えるそぶりもみせないように言ってやった。もうどうにでもなれ。馬鹿になってやる。どうせ3時間後には俺を笑うやつもいないんだろうしな。


 彼女は張り付けたような笑顔を見せた。




「そうと決まれば、ワンタンの上に乗ってください。説明は移動しながらで」




 そのワイバーンはワンタンという名前らしい。ジャスティスと名乗った幼女はカランと梯子をかけ、俺はそれを登って、4畳間はあろう背の上に乗った。


 するとジャスティスが合図したそぶりもないのに、ワンタンが翼をはためかせ、身体を浮かし始めた。




「このまま飛んだら振り落とされるんじゃ…」


「ワイバーンは魔法で飛びます。翼はあくまで補助、私たちは魔力の障壁で守られます。」




 そういうことにしておこう。




 ワンタンは突然加速し始めた。内臓をリバースしそうになったが、ジャスティスの言うとおり、振り落とされることはなかった。そよ風を感じる程度だ。






 ……………






 「魔王は六大精霊を使って、神の世界への門を開こうとしています」




 はぁ?なんじゃそりゃ?精霊ってなんだよ。




「魔力とはそもそも神の世界の力、それを6体の精霊が管理して、この世界に供給しているのです」




「しかし、魔王はすでに全ての精霊を体に取り込み、門を開く儀式を開始しました。儀式の解除方法は儀式主を殺すほかありません」




 もし門が開いちまったら?




「大量の魔力がなだれ込み、この世界は負荷に耐え切れず破裂します」




 なんだって魔王様はそんなことを?




「神の力が欲しいのかもしれません、たしかなことはわかりませんが」




 神の力ねぇ…神様なんてろくなもんじゃないぞ。ん?待てよ?この世界にくる前に会った奴とジャスティスが言った神は同一人物なのか?だとすると神はこの設定違いのせいで自分の首を絞めたってことだ。神の世界に侵入者を招いたことになるんだからな。


 ざまあみあがれ。そしたらあの必死な叫び声も納得できる。魔王も神をブチのめす算段くらいはついているんだろう。神もそれを理解しているってことか。


 それにしても疑問に残ることがある。それは…




「あっそろそろ着きますよ」


「へ?どこに?」


「王都です。魔王討伐に参加するメンバーと合流します」


「なぁ…なんでお前はそんなに事情を把握しているんだ?」


「元、神だからです」


「はあぁぁ!?」


「うるさいですね…あそこにおりますよ、それと今から会う人たちは頭がいかれているので、逆鱗にふれないように、上手く立ち回ってください」




 えぇ…もう何が何だか…


 ちなみにどんなやつらなんだ?








「一人は10万人素手で殺した殺人鬼、一人はその殺人鬼を投獄した魔術師、もう一人は一度魔王を倒したロリコン野郎です」






 

 ワンタンから降りた俺たちは駆け足で待ち合わせ場所という酒場に向かった。 


 酒場に入ると妙に静かでそこには3人組がいた、いや、正確には初めは2人組だとおもった。




 2人の間の2メートルほどの真っ黒い鉛筆が「ちわ~よろしくね~」と女子高生のような口調で渋い声を発するまでは。




 一人はシャツにミニスカートで本当に女子高生のようだった。赤髪の女の子。




「アルティメット・ランキングといいます!とっ、特別国制少年院から来ました!アルと呼んでください!よっ、よろしくおねがいします!」




 次に黒鉛筆。




「トータルだよ~魔術師やってま~す」




 最後に金髪の男前。




「カオルだ。これからよろしく。それよりジャスティス様再びお会いできて光栄です」




 カオルは俺に握手をした後、ジャスティスに跪いて手の甲に唇をちかづける。




「やめてください。こんなことをしている場合ではありません」


「『礼儀を怠る者はすべてを怠る』そうじゃありませんでした?」


「私は今は騎士です。これは不適切な礼儀です。貴方は私に触りたいだけでしょう」




 カオルはにやにやと笑い、降参するように両手をあげた。




 俺は数十分前からとんでもなく非常識な目にあっているが、今が一番驚愕している。人を一番驚かすのは人というわけか…人かどうかあやしいやつもいるが。




「さて、今後について話したいと思います




 まず移動手段についてですがトータルさんに一任します




 そしてスケジュールですが大まかに説明します




 残り2時間前に聖剣『ソード』を手に入れます




 残り1時間半前に魔王以外の魔族を絶滅させます




 残り40分前に魔王城に到着します」






 しばし間を置いた。






「残り10分前に魔王の首をおとします」





 残り2時間29分32秒

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