乙女の里村

大和 飛鳥

息が詰まりそうだから、都会から隠れるの…

漆黒のアスファルト。高くそびえ建つビルのジャングル。

息が詰まりそうなくらいの人の波。

毎朝の通勤ラッシュ。見知らぬ人に体が触れ合いながらの時間。

毎日の通勤ファッションに悩ませられる時間。

メークとヘアスタイルにかける時間の無駄。

オフィスワークでの堅苦しい時間。

ランチでの見栄の張り合い。

ヤリガイの見つからない仕事。

これが、私の日常です。

本当に息が詰まりそう!

もっとゆったりと過ごせないのかなぁ?

もっとゆっったりと、自由に誰にも束縛されずに生きたい…

そうだ、『王妃の里村』のように私も隠れ住みたい。

川の畔の水車小屋、懐かしい故郷を思い出すような家屋。矢車菊が咲き乱れ、のどかに仕事をする農夫たち。今日食べるだけの物を収穫し、シンプルに生きたい!

小さな家と、少し離れた東屋が私の心地よい居住区。

ちょっとヨーロッパの香りがする、プチ・トリアノンを愛した王妃と同じような体験が出来る住まい…

おばあ様が住んでいたかの地。

私は逃げるわ!

心許せる友人だけがここに来ることが出来る場所。

茅葺屋根の家。

澄み切った川のせせらぎに水車小屋。

家の軒下には鶏を飼育するスペースがあって、納屋には鶏小屋があって…

子供の頃、納屋にある鶏小屋から卵を取ってきた思いで…

おばあ様が住んでいたかの地に逃げよう!

まだ、梅の蕾が膨らまない初春のある日。

コンクリートジャングルの都会から、緑あふれる里村に私は

やってきたのです。

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乙女の里村 大和 飛鳥 @yamatoasuka

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