12、幸せな時間

基本的に俺は女性と一緒に居るのは好きじゃ無い。

その理由として.....気分が乗らないと言える。

だけどそれは2番目の理由だ。


それ以外に人に見られるのが嫌いという点が有る。

これが1番目の理由と言えるかも知れない。

つまり俺はボッチが好きなのだ。

それは.....昔の事が関係しているが.....。


だがその中で山住さんという女性が大学の授業の際に手続きを助けてくれたお礼をしたいと近付いて来た。

俺は姉妹の件も有り10分が限界と時間を定めてから。

お礼に付き合う事にした。


山住さんが目の前にやって来る。

そして是非座って下さいと促された。

彼女はアイスティー、俺はコーヒーをお願いした。

ゆっくりと俺は腰掛けつつ。

目の前の椅子に座る山住さんを見た。


「私、助けてくれたの凄い嬉しかったのですが.....何故、私の様な人を助けてくれたんですか?」


「.....俺は簡単に言うと姉さんに困った人を助けてあげて、と言われた。だから助けたと言えるよ。君が困っていたのは事実だからね」


「そ、そうなんですね.....」


アイスティーを飲みながら.....俺を見てくる山住さん。

その背後では、何だアイツら、的な目をしている。

そんな様子を見ながら.....眉を顰めつつ。

外の景色を見た。

嫌な奴らも居るもんだな。


「私.....助けてもらって本当に嬉しかったです。有難う御座いました」


「そうか。良かった。そう思ってくれて」


「.....で、その.....お願いが有るんですが.....」


「お願い?」


わ、私、本当に嬉しかったんです。

こんな私ですが.....付き合ってくれませんか、と告白してきた。

俺は目を丸くする。

それから口を噤んだ。


「.....それは.....出来ない。御免な」


「あ、そ、そうですよね.....ご、御免なさい.....」


「君の思いは受け取ったよ。だけど.....御免な。今は付き合う暇は無いんだ」


「で、ですよね。先輩も忙しいですから.....」


少しだけ落胆した様な姿を見ながら。

心を痛めつつ、本気で謝った。

人と付き合う程に暇は無いと思うから。

叔母さんに忠告を受けたばかりだ。

現を抜かす暇は無いと思う。


「忙しいって言っても.....学校だけじゃ無いんだけどな。御免な本当に」


「.....は、はい。でも.....何か有ったら私に頼って下さいね」


「.....ああ。その時は宜しくな」


そして俺達は暫く会話してそのまま別れた。

俺はそれから.....大学内に向かう。

レポートを貰ってから、もうそろそろかな、と思いながら帰って来た。

そして、ただいま、と玄関を開けると。


「お兄ちゃん。お帰りなさい」


「兄貴、お帰り」


「お帰りなさい。風月さん」


そこには料理が有って。

みんなが俺を迎えてくれた。

俺は?を浮かべながら.....見つめる。

どうしたんだ、と聞く。

すると希が口を開く。


「.....お兄ちゃんにお疲れ様って言いたかったの」


「でも言えるって言ってもお金は無いから.....だからね」


「.....それでか」


俺は苦笑する。

すると叶が一歩を踏み出して俺の手を握ってきた。

不安そうな目をしている。

俺は首を傾げる。


「.....叔母さんに会ったんだよね」


「.....何でそれを知っているんだ?」


分かるよ。だって.....兄貴の目が、ね、と俺を見てくる。

俺は少しだけ複雑な目をした。

お兄ちゃんは分かり易いから、ね。

と希も俺の手を握る。


「.....希ちゃんも叶ちゃんも.....本当に良い子ですね。こんな事を.....。涙が出ます」


「俺の自慢の親戚の子達だから.....」


でも俺も涙が.....出てきた。

何でこの子達が親を失わないといけないのだろうか。

時計の針を戻せないのは何故なのだろうか。

そう.....思ってしまう。

死ぬのは俺で良かったのに。


「.....お兄ちゃん.....」


「兄貴.....」


「.....有難うな。お前達。せっかくだから足立さんも食べませんか」


心配げに見てくる叶と希に首を振りながら足立さんを和かに誘う。

すると.....足立さんは目を丸くした。

そして慌てる感じで言う。


「.....え?私ですか?.....良いんですか?」


「.....はい。な?希。叶」


「だね兄貴」


「うん」


そんな会話をしながら。

目の前の沢山の料理を見ながら.....俺はまた涙を浮かべて。

それを拭ながら.....笑みを浮かべた。

そして.....各々、ちゃぶ台の周りに腰掛ける。


「叔母さんの話、後で聞かせて下さい」


「.....そうだな」


「.....お願いね。兄貴」


それから.....ご飯を食べた。

本当に本当に幸せな時間だ。

思いながら.....俺は再び笑みを浮かべた。

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氷壁を砕く為に 〜俺と中学生姉妹が一緒に暮らす事になりました〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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