11、赤面とあがり症

茨の道と叔母さんは話した。

全然間違って無いしその通りだと思う。

でも俺は.....間違った道を選んだとは思っていない。

叶と希を守る為に.....最善の努力をするつもりだ。


「.....」


ファミレスに暫く滞在していた後。

俺は顎に手を添えながら.....帰宅する。

すると俺の家の前に誰か居る事に気が付いた。

足立さんで有る。

俺を見てから、あ、と声を上げた。


「あ、風月さん」


「足立さん。.....どうしたんですか?」


「叶ちゃんと希ちゃんに呼ばれました。それで来たんです」


「.....え?あの二人が.....」


俺は目を丸くする。

その言葉に、はい、と笑顔を見せる足立さん。

それに対して俺も笑みを浮かべた。

そしてアパートを見上げる。


「お料理を教えてほしいそうです」


「.....そうですか.....」


「叶ちゃんも希ちゃんも.....本当に良い子ですよ。.....なのに」


何でなんでしょうね、と涙を浮かべる.....足立さん。

俺は、優しい女性だな.....、と思う。

そして足立さんは涙を拭って俺を見てきた。

すいません、と言いながら、だ。


「行きましょうか」


「.....はい。宜しくです」


そして俺は足立さんの持っていた買い物袋を手に持ち。

それから.....叶と希の待つ部屋に向かった。

ガチャッと扉を開ける。


「あ、お兄ちゃん」


「兄貴」


「.....ただいま」


それから二人は俺の横に立っていた足立さんを見て顔を見合わせる。

足立さんは?を浮かべていた。

そうしていると俺に対してニコッと叶が八重歯を見せて笑う。

そして.....


「兄貴。ごめん。もし良かったらもう少しだけ外を彷徨ってくれない?足立さんと話したいの」


「.....え?それはどういう.....」


「女性同士で話したいの。お願い」


俺をジッと見てくる二人。

目を丸くなったが俺は、分かった、と返事をした。

それから足立さんを見る。

足立さんは俺を見ながら頷いていた。


「任せて下さい。二人のお世話は」


「.....宜しくです。俺は外に居ます。と言うか.....大学に行ってます」


「分かりました」


大学に用事をしに行こう。

思いながら俺は扉を静かに閉めた。

それから.....二人に、足立さんに手を振ってから。

アパートの階段を降りて行く。


「.....剛弘に電話でもしてみるか.....」


スマホを取り出してから俺は納得しつつ。

電話を掛けて呼び出す。

すると数秒して電話に剛弘が出た。


『おう』


「.....剛弘か。遊ばないか」


『スマン。ちょっと忙しい。今、運動していてな。これもApple Wa◯chからなんだ。申し訳無い。帰ろうにも遠くてな』


「ああ、成る程な。それはすまん」


剛弘の気を逸らす訳にはいかないな。

思いながら.....電話を切ってから大学の方角を見る。

それから頬を叩いてから歩き出した。

大学に行って.....そして暇を潰そう。

考えながら俺は大学に向かった。



県立須藤大学。

ケンスドとか短縮で呼ばれたりする大学だ。

そこの.....大学の門を潜ってから。

俺は大学を見上げた。


「さて.....何処で暇潰そうか.....」


横の運動場ではテニスをしている奴らが居た。

そして別の方角ではカフェに学生が屯している。

俺はそれを確認しながら.....歩く。

そうしていると.....背後から声がした。


「あの.....」


「.....はい?」


「.....もしかして中島さんですか?」


そこには身長がそんなに無いが.....顔立ちが可愛らしい女の子が立っていた。

黒髪のボブで.....黒縁の眼鏡を掛けている。

所謂、眼鏡美少女と言えるかも知れない。

俺を指を動かして見上げつつ少しだけ顔を赤くしている。

いや.....誰だこの娘?


「あの、どちら様ですか?」


「.....えっと.....えっと.....前の受講の際に助けてくれて有難う御座いました」


「え?.....あ.....」


えっと.....あ!

成る程。

新入生で.....授業の受け方が分かって無くて.....俺が助けた。

確か山住空(やまずみそら)だった様な。

そんな名前だった。

一瞬しか見てないが.....。


「その、わ、私.....友達が居なくて.....困っていました」


「.....そうなんだね」


「で、そ、その.....お礼がしたくて.....もし良かったら私とデートして下さい!」


「へぇえ?」


ちょっと待て。

確かに知っているけどいきなりそれ!?

素っ頓狂な声が出た。


今何を.....と考えていると山住さんは目をパチクリして.....真っ赤に染まる。

それから俺を慌てながら見てくる。

さながら小動物の様な感じでだ。

歯車が狂った様に同じ言葉を繰り返し始めた。


「わ、私、私、私!!!!?えぇ!?」


「ちょ、落ち着いて!?」


「.....あ、あわ.....私.....デートって言いましたか!?」


「あ、ああ.....」


本音が口に出てしまいました、と小さく聞こえた。

俺は瞬きしながら見る。

山住さんは.....もう顔に赤面する場所すらないぐらいに顔を赤くして唇を噛んだ。

それから.....あたふたする。


そんな山住さんがそうしていると.....通りすがりの1年?らしき奴らが山住さんを見て、またか迷惑野郎、とか言いながら笑う。

それに対して山住さんが落ち込んだ。


「.....す、すいません.....私.....恥ずかしがり屋なんです.....あがり症でもあって.....」


「.....そうなんだ」


「.....でもその.....はい.....お礼だけがしたくて.....」


山住さんは俯く。

その姿を見ながら.....頬を掻く俺。

そして山住さんを再度見た。

それから言う。


「.....俺も用事が有る。少しの時間なら付き合えるけど」


「え!?ほ、本当にですか!?」


「ああ。ほんの10分ぐらいなら」


「は、はい!有難う御座います!本当に感謝しています!」


山住さんは笑顔を見せる。

何故か俺は1年の女子とカフェに行く事になった。

待たせちゃ悪いのであまり付き合えないが。

そう思いつつ.....カフェに歩き出す。

山住さんが付いて来ながら、だ。

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