第4章 私としては
10、茨の道
風月。
俺の名前は姉さんが考えた。
姉さんが俺を見てから、この子.....満月の日に生まれて優しげな風が吹いていた.....だから風月!、と名付けてくれたのだ。
俺は今でもその事を方時も忘れた事は無い。
親父も母親も提案していたが姉さんの案が採用されたのだ。
それからという今も。
姉さんには感謝しか無い。
俺は.....姉さんと母親と共に生きてきた様なものだ。
思いながら.....夜。
午後9時ぐらいだが俺達は寝た。
姉妹はスヤスヤ寝ている。
だがその中で横になってスマホを弄っているとメッセージが飛んできた。
俺はメッセージに思いっきり見開く。
何故なら送信主が.....叔母さんだったからだ。
明日金曜日に近所のファミレスにて話が有ります、と書かれている。
俺は.....その言葉に眉を静かに顰めた。
叔母さんが俺達をまた引き離そうとしているのではないだろうかとも思ってしまう。
「.....悪い様に考えてしまうのは俺の悪い癖だな.....」
思い出すは昔の事。
あの凄惨なイジメだ。
だけど何時もその時はずっと姉さんが助けてくれた。
でも姉さんはもう居ない。
姉さんは死んだ。
「.....俺が.....姉妹を守らなければいけない」
その様に思い、呟きながらスマホを充電して明日はどんな日になるだろう。
思いながら俺は.....目を閉じた。
そしてそのまま俺は寝る。
明日を覚悟して.....だ。
絶望にならない事を祈りたい。
☆
「.....?」
花園の様な香りがする。
だが猛烈に動き辛い。
花園の様な香りの中なのに、だ。
俺は???を浮かべて目を開ける。
そこには叶の顔が見えた.....って!?
「.....お、おい.....!?」
何と言うか横のベッドで寝ている筈の叶が俺に縋っていた。
叶はスヤスヤ眠りながら俺を抱き枕の様に扱っている。
ちょ、ちょっと待って。
何だこの状況は.....!?!
思いながら俺は汗を噴き出す。
横では希がスヤスヤ眠っている。
そんな感じで仕切りが有るのに何故に俺の所で叶は寝ているのだ!?
考えながら状況をまとめるが温もりが有り過ぎて体がだんだん熱くなる。
その為に考えが纏まらない。
「.....か、叶.....」
引き離そうとモゾモゾするが全く身動きが取れない。
取り敢えずどうしたものか.....!
このままではマズイ。
何故なら叶の聖なる胸が見えそうだからだ!
本格的にヤバイ!
これは絶対に.....色々と駄目だ!
「くぅ.....」
「スースー」
引き剥がしてもしがみ付いてくる叶。
その為、引き剥がす事すら困難であった。
俺は困惑しながらモゾモゾ動く。
すると.....叶が顔を上げた。
そして俺に迫ってく.....いやぁ!
思っているとキス寸前で叶が目を開けた。
そして俺を目をパチクリしながら見つめる。
俺は青ざめながら、やっほー.....、としか言えなかった。
叶は.....数秒考えてそして思いっきり見開き。
「っっっ.....!!!!?」
俺をバシィと平手打ちした。
☆
「.....俺は巻き込まれ側なんだが.....」
「そ、そうは言えど!.....兄貴のアホ!」
「お兄ちゃんのスケベ」
「.....ハァ.....」
焦げたパンを食べながら。
俺は平手打ちされた頬を痛いと思いながら触る。
困ったもんだな.....おい。
考えながら2人を見る。
因みに今日の事を二人に伝えていない。
俺は別の用事で誤魔化す。
「今日な、俺ちょっと大学の用事で出て来るから。鍵掛けといてな」
「え?あ。そうなんだ?気を付けてねお兄ちゃん」
「兄貴、気を付けてね」
「.....ああ」
叔母さんとの接触。
はっきり言って.....3日ぶりぐらいだ。
考えながらも複雑な顔にならない様にしながら.....首を振る。
それから笑みを浮かべた。
「.....二人は今日はどうするんだ?」
「.....叶お姉ちゃん」
「.....だね。希」
「?」
俺は首を傾げる。
すると叶と希は顔を見合わせて笑顔になる。
そして宣言する様に希が俺に言ってきた。
その言葉を、だ。
「私達、お料理の練習をするの」
「希と同じく」
「.....マジで?」
うん。
私達ね。お兄ちゃんを支えたいから、と顔を見合わせて笑顔になる2人。
俺は見開きながら.....そうか、と笑みを再び見せた。
それから.....俺達は飯を食ってから。
各々、動き出した。
☆
この近所には学生が利用するファミレスが有る。
それなりには儲かっていると思えるファミレスだ。
そのファミレスに俺は呼び出された。
ボイコットしても良いかも知れないが.....すればその後がどうなるか分からない。
なので行く事にした。
「.....風月さん」
「3日ぶりですね。叔母さん」
「そうですね」
楽しいと普通は思えるファミレス。
だけど俺にとっては息が詰まりそうになっている。
俺は.....その空気を打ち壊す様に息を吸い込んで吐いた。
そして叔母さんを見る。
「椅子に座って下さい」
「.....はい」
促され、椅子に腰掛けた。
そしてスーツ姿の叔母さんを見る。
相変わらずキリッとしながら.....お淑やかさが有る。
思いながら.....息を飲む。
「.....元気ですか。貴方も.....叶さんも希さんも」
「.....全て纏めると元気です。みんな」
「そうですか」
沈黙。
しかしそれはそうとコーヒーを飲む姿が本当に様になっているな。
乾いた唇を舐めながら居ると叔母さんはコーヒーカップを手元の皿に置いた。
俺はそれを少しだけビクッとしながら見る。
すると叔母さんは俺を見てくる。
「貴方も何か飲みますか」
「.....いえ。今はそんな気分では無いです」
「そうですか。では話をしても宜しいですか」
「話?」
はい、と頷く叔母さん。
俺は唇をゆっくり噛んで離してから息をまた飲む。
そしておばさんは話し出した。
俺は.....見つめる。
「結論から言います。貴方は育てきれません。叶さんと希さんを今直ぐに帰宅させなさい」
「.....!.....いや.....それは」
「我が儘だけで通せると思ったら大間違いです。あと一年で貴方は確かに未成年では無くなりますが不可能です。中学生を2人も育てるのは。全てを考慮しますが」
「.....」
俺は眉を顰めて眼鏡を上げた。
やはりか、と思ったのだ。
その様な話をするとは思ったのだ。
だから覚悟は出来ていた。
「貴方は愚かな真似をしています。本当にです。金銭にも余裕が無ければ、住む場所も放棄してあの狭いアパートで生活している。無謀極まりないです」
「.....でも実際はみんなよくやってくれています。周りも.....周りの友人達も協力してくれています」
「それは迷惑を掛けているの間違いでは?」
思いっきり見開いた。
そして、.....そ。そんな事は、と俯く俺。
叔母さんは盛大に溜息を吐いた。
それから.....俺を見てくる。
「その辺もよく考えて下さい。そして私は.....無謀な事をしている貴方が心配です」
「.....」
「.....育てるなんて無理です。絶対に。.....それにこの事の全ては私達親族の全てを敵に回していますよ」
「.....」
ここまでか?と思いながらも.....俺は顔を上げた。
俺の決意を伝える為に、だ。
そして俺は胸に手を添えて.....言う。
「.....俺は絶対に2人を育てます。育ててみせます」
「.....」
「それが.....姉さんから託された最後の願いだと思っています」
「.....」
俺は自分の考えを全部伝えた。
そして.....叔母さんを真っ直ぐに見据える。
叔母さんは.....盛大に再び溜息を吐いた。
それから俺を見据える。
「.....貴方がやっている事は茨の道を突き進む事です。不可能と断定した時。貴方が倒れるなどが起こった時。私は貴方に前も言った通り直ぐに叶さん、希さんを引き離します。宜しいですか」
「.....はい」
「親戚の方々は私が何とかします。.....貴方も健康には気を付けなさいね」
そしてそのまま立ち上がる叔母さん。
それから俺に頭を下げた。
俺は目線でそれを追いながら.....お金を払って去って行く叔母さんを見送る。
改めて.....無謀な事をしているな、と。
思い知らされたが.....。
「.....有難いな本当に.....」
思いながら俺は俯いた。
そして.....暫くその場に居て。
考えていた。
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