9、後輩、足立美佳

剛弘と叶、希の姉妹と共に近所のスーパーにやって来た。

すると馬鹿みたいに剛弘がカゴに食い物やら様々な物を押し込んでいく。

姉妹と俺は必死に止める。

この男.....不審者に見られてもおかしくないんだが。

どうしたもんか.....。


「剛弘。買い過ぎだぞ。本気で奢る気なのか」


「当たり前だろう。言った限りは実行するぞ」


「剛弘さん!そんな!」


「おう。気にする事は無いぞ。叶ちゃん!ハッハッハ!」


いや絶対的に駄目だと思う。

そもそもに俺達が気にするんだが。

考えながら剛弘を止めていると誰かが俺達に声を掛けて来た。

剛弘と共に顔を上げる。


「剛弘さん?どうしたんですか?そんな所で何をしているんですか?」


「.....お!おお!丁度良い所に来たな!足立!」


俺は?を浮かべて見る。

フワフワしている黒の短い髪。

そして柔和な表情を浮かべてカゴに食材を詰め込んでいる俺達を見下ろしている。

身長はそこまで無い感じで小柄だ。


誰だこの子?

でもどこかで見た事が.....有るな。

俺の通っている大学の後輩かも知れない。

そんな雰囲気だから、だ。


「紹介するぞ。風月。この子だ。先程の女性とやらは」


「え?本当に?.....この子なのか?」


「そうだ。足立美佳(アダチミカ)だ。俺の後輩に属する!」


「いや.....お前.....言い方が良くない。属するって.....」


苦笑しか出ない。

足立さんとやらも苦笑い。

ハッハッハ!まぁ良いでは無いか!と言う剛弘。

俺はそれに盛大に溜息を吐いてカゴを持っている足立さんを見る。


買い物だろうか。

そんな風に考えていると剛弘も見て、足立も買い物か?、と尋ねた。

足立さんは俺達を見て顎に手を添える。


「そうですね。それと話が変わりますが.....えっと.....もしかして.....」


「そうそう。お前に話していたがこの風月こそ.....助けて欲しい人だ。足立」


「そうなんだ!.....初めましてです。足立美佳です」


「あ、はい.....初めまして」


それにつられて叶と希も頭を下げて挨拶をして自己紹介した。

足立さんは俺を見ながら笑みを浮かべて剛弘を見る。

そして、優しそうな人ですね、と言葉を発した。

当たり前だ、と剛弘は胸を張る。


「自慢の俺の友人だからな!ハッハッハ」


そんな剛弘を見ながらもう一度、笑みを浮かべて。

そして俺を見てくる足立さん。

美人だな.....。

思いながら.....見ていると。

足立さんは俺を見つめてきた。


「えっと、風月さんで良いですか?」


「.....大丈夫だ」


「剛弘くんから事情は聞いてます。.....大変でしたね」


悲しげな顔をする足立さん。

俺はそれを見ながら、まあな、言いつつ。

横で立ち上がった剛弘を見る。

両手にカゴを、沢山の荷物で剛弘はレジに向かおうとしていた。

嘘だろオイ。


「剛弘!良いって。奢りとかは!」


「そういうわけにはいかんぞ。買ってくるからな」


「もしかして食材を風月さん達に?.....じゃあ私もお金出しますよ剛弘さん」


「いやいや!」


俺達は顔を見合わせて止める。

しかし半分ずつとごねて。

俺達は見守るしか出来ずだった。

今度なんか学食でもせめて奢ろう.....。



「すいません。足立さん。そして剛弘も」


「全く問題無いぞ。ハッハッハ!」


「全然。大丈夫ですよ。風月さん」


その様に会話しながら帰宅する。

剛弘は足立さんに、風月を色々な面で助けてやってほしい、と話していた。

本当に申し訳ないな.....。

すると足立さんが俺の元にやって来た。


「風月さん」


「.....どうしたの?足立さん」


「敬語じゃ無くて私は呼び捨てで良いです。先輩と後輩なんですから」


「いや、そうは言えど.....」


そうしていると.....希と叶が眉を顰めて俺を見ているのに気が付いた。

俺は!?を浮かべながら.....聞く。

どうした?、と。

しかし希も叶も、ふんだ、的なで、どうもしていません、と声を発した。

俺はクエスチョンマークを浮かべ出す。


「.....?」


女の子の心って分からない.....。

思いながら.....足立さんを見つめる。

足立さんは、あらら、という感じだった。

もしかしたら私はあまり関わらない方が良いですね、とも話す。

え?どういう事だ。


「.....剛弘?俺、足立さんになんかしたか?」


「うん?.....そうだな。.....この状況から察するにお前が鈍感と言えるかも知れないかもだな。ハッハッハ」


「.....は?」


ちょっと待て鈍感って何だよ.....?

考えながら?を浮かべるしか出来なかった。

足立さんは、それはともあれ宜しくです、と俺に再び笑みを見せる。

俺は、あ。はい、と少しだけ紅潮した笑みを見せた。

それに対して叶と希が頬を膨らませる。


「デレデレしない」


「兄貴のアホ」


「え?!」


そして二人は眉を顰めて言う。

ちょっと待って、意味が分からない。

剛弘は、ハッハッハ、と笑っているしよ。

足立さんは少しだけ苦笑している。


いや本気で何だよオイ。

盛大に溜息を吐いて歩く。

そうしていると.....そのまま自宅に着いた。


「ついでなので.....この荷物を家の中に入れましょう」


「.....御免な。有難う。.....剛弘も有難うな」


「おう」


俺に対してその様に笑顔になる剛弘。

そうして足立さんが部屋に来る事にはなったが。

何でか希と叶が不機嫌そうだった。

いや.....何故?

全く分からないまま.....俺は目をパチクリしか出来なかった。



改めて聞くと剛弘の知り合いで今年入学した1年生らしい。

それで.....名前を足立美佳と言い、年齢は18歳らしかった。

普通科と技術科ってのが有るが普通科らしい。

その1年と何処で知り合ったのだ.....剛弘は。


「.....お前さ、人脈多すぎだろう」


「ハッハッハ。多い方が有利だからな!」


「すまないな。足立さん」


「いえいえ。全然大丈夫です」


そんな会話をしながら.....俺達は食材をなおす。

その際に.....叶がヒソヒソ聞いてきた。

それもとんでもない事を、だ。


「兄貴。胸が大きい人が好きなの?」


「ブファ!」


吹き出した。

何を言ってんだよ。

思いながら叶を見る。

叶ちゃんは胸のサイズを自らで測りながら.....溜息を吐く。

いや、本当に一体全体、何だ?


「貧乳で悪かったね。兄貴」


「貧乳も何も.....俺はそんなもの.....」


「叶お姉ちゃんに勝った.....」


ふふーんと胸を張る、希。

本格的に意味が分からない。

思いながら???を浮かべていると。

足立さんがやって来た。


「何を作っているのですか?」


「.....あ?ああ.....えっと冷食で悪いけどな」


「冷食.....ばかりだと身体に悪いですね。考えた方が良さそうですね。ふむふむ」


冷食を食べている、と。

とメモする足立さん。

俺は、何でメモを?、と聞くと。

足立さんはニコッとした。


「だって作りに来るんですからね。色々と知っておかないと」


「.....あー.....なるほど」


すると叶が見上げた。

そして、足立さん!、と声を発する叶。

どうしたんだと思っていると。

とんでもない事を聞いた。


「胸をデカくするにはどうしたら良いですか!」


「へ?!」


「おま!?叶!?」


流石の剛弘も吹き出した。

俺は赤面しながら足立さんを見る。

だが足立さんは.....そうでも無いという感じで叶を見た。

そして.....胸に触れる。


「.....私は.....牛乳だよ.....!」


「そ、そうなんですね.....!」


「いや.....何の話をしているんだよ.....」


額に手を添えて盛大に溜息を吐いた。

それから.....俺達はクスクスと笑い合う。

今は幸せだな、一応。

その様に思いながら、だ。

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