8、剛弘の弟の存在

須山剛弘。

俺が入学してからずっと助けてもらっている人物だ。

か弱い俺の代わりに陰口を言う奴らを滅茶苦茶にボコったりする少しだけやり過ぎな面も有るが.....俺にとっては本当に良い友人だ。

その剛弘が俺の家にやって来た。


理由としては.....俺を助けたいという事だった。

相変わらずの野郎だとは思う。

お婆さんとかの荷物を持って行ったりとか。

さっき言った通りだが俺をイジメている奴らを、何をしているんだ、とボコったりするそんな性格だから.....俺を放って置けなかったのだろう。

剛弘は俺達を見ている。


「うむ。良い家族じゃ無いか。良い顔をしている」


「.....実際は血が繋がって無いけどな。この姉妹達とは」


「そうなのか?それはまた驚愕だ。アッハッハ!」


「ハァ.....んでそれは良いけど、どうして来たんだ」


助ける為以外で、と俺は話す。

すると剛弘は、おう、と言いながらスマホを見せてくる。

そこには.....かなり若い女性が写っている。


中学生ぐらいの長髪の黒髪のスーツを着ている女性。

こっちを見ながらピースをして剛弘と肩を組んでいる.....が。

どっか観光名所で撮った様だが。

俺は?を浮かべて見る。

この可愛い童顔の少女が何だ一体。


「この女性がどうしたんだ。中学生じゃ無いか」


「おう。この人は俺の先輩だ」


「.....ハァ!!!!?どう見てもおま!中学生じゃ無いか!」


「年齢は不詳だ。だけど良い先輩だぞ。お前を助けたいと申し出た。俺から相談したらな」


いやいや.....え?

この中学生みたいな人がか?

愕然として思いながらスマホを見つめる。

叶と希も驚愕に目を丸くする。

アタシ達と同じ年齢の様に見えるのに.....と、だ。


「年齢不詳ってどういう事だ。何でそんな事になっている」


「それは.....怖いからな。この人。年齢聞くとぶっ殺されそうになる」


剛弘が青ざめながら珍しくガタガタ震えている。

嘘だろお前.....剛弘が?

こんなに震えているって.....どういう事をされたんだよ。

その様なツッコミを入れつつ溜息を吐きながら笑みを浮かべる。


「でも剛弘。有難うな」


「おう?何がだ」


「.....お前が居たから繋がれるよ。俺だけじゃ無理だった」


「ハッハッハ!お前の友人だからな俺は!」


高笑いする剛弘。

まあ確かにそうだが。

でもなこんなにしてくれる友人ってのも珍しいぞ。

この世界でそんな友人にはなかなか巡り合わないと思う。

俺は昔の事をふと思い出した。


「お前には本当に感謝しかない」


思いながら笑みを浮かべる。

すると.....剛弘は少しだけ複雑な顔をした。

俺はその事に?を浮かべる。

そして剛弘は再び言葉を発し出した。


「.....風月。それはそうと言わなければいけないことが有る」


「どうしたんだ?改まって」


「俺な、多分.....これまでずっとお前を俺が亡くした弟の様に見ていたかも知れないんだ」


「.....え?」


亡くした弟.....?

俺は?を浮かべながら剛弘を見る。

剛弘は俺を本当に複雑な顔で見ていた。

その中で叶と希は神妙な感じで俺たちを見ている。


「弟はな。.....交通事故で死んだんだ」


「.....!.....何だって?」


「.....突然でごめんな。ずっと考えたんだが今話した方が良いかと思った。俺は.....弟が亡くなったショックがデカすぎてな。それでお前を守っている.....のかも知れないと思っている。お前の存在を認識してはいるんだが.....俺は自分の手駒の様に風月を利用していたのかも知れない」


「剛弘.....」


それは.....初めて知ったんだが。

思いながら.....剛弘を見る。

剛弘は、本当にすまない、と呟いていた。

それから.....俺を見てくる。


「.....俺自身が鍛えているのは弟の.....意思を受け継ぐ為だ。弟は優しかったからな。だから鍛えている。でも.....この事は話しておかないといけないと思ったのだ。だから.....」


「剛弘。大丈夫だ」


「.....?」


「お前は弟の様に俺を守ってくれているんだろ?それだけ大切にしてくれている。その様に思える。でも俺を認識してくれたら嬉しい」


俺は剛弘の肩に手を添える。

それから.....俺と叶、希は頷きながら見つめる。

剛弘は、有難う、と呟きながら笑みを浮かべた。


その次に、だが弱音はこれで終わりだ、と笑みを浮かべる。

それから.....俺を見てくる剛弘。

すまないな。弱音を見せて、と笑みを浮かべて、ハッハッハ!、と笑った。


「.....俺は知っている。どれだけ人が交通事故で亡くなったら悲しいかを。だから助ける。俺は命を掛けてでもな」


「命は掛けなくても良いが.....でも有難うな」


「おう。その為に俺はこれを先輩とお前の為に持って来た」


「.....え?」


封筒を置く、剛弘。

その封筒からは.....書類が見えた。

俺は?を浮かべて剛弘を見る。


「.....本来なら現金を100万ぐらいこの場所に直ぐに持って来たいところだがそれは.....問題が有るからな。工場バイトしてみないか。ここで。効率良くお金をくれるぞ」


「.....え?お前.....」


「.....俺の知り合いを頼った。そして俺が認定している。時給も高い。.....もし良かったらだが」


「.....剛弘.....」


叶と希を見る。

だがこの二人は.....と思ったのだが。

その事に関しても全て考えてくれていた様だった。

直ぐに剛弘が言う。


「.....俺の同級生で面倒見の良い女性が居てな。その女性に来てもらおうかと思う。ついては念の為に明日、共にその女性に会おう。風月」


「.....お前.....何も出ないぞ。お礼とか。そこまでしてくれても」


「要らん。そんなもの。ハッハッハ」


「.....」


本当に.....コイツと言うやつは。

涙しか出てこない。

思いながら.....感謝を伝えた。

剛弘は、まだ何か有ったら必ず頼れ。良いか?、と俺をみてくる。

そして歯を見せて笑った。


「.....せめて飯を食って行けよ。冷食だけど」


「.....おう。その前に買い物に行かないか。食材を奢るぜ」


「.....そこまでする必要は無いんだが.....」


「ハッハッハ!」


そして俺達は買い物に行く事になり。

それから俺と叶、希は感謝の気持ちを伝える為に料理を作る事にした。

俺は.....剛弘という友人を持って本当に良かったと思う。

そう感じない筈が無かった。

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