第3章 助ける為に
7、風月の友人
俺は一家族の幸せをぶっ壊した。
本気で.....クソの様な真似をしたと思う。
姉妹の両親を俺は殺したと言える。
俺じゃ無いと世間は言うかも知れない。
だけど俺が.....きっと帰らなければ.....こんなに世界は歪まなかった。
だから俺は.....自殺すべき存在なんだと思う。
だけどそんな俺に姉妹は違うと寄り添ってくれた。
その姉妹とは俺が我が儘で連れて来てしまった姉妹だ。
姉さんと.....姉妹の父親の武さんの家族。
姉妹は俺と悲しみを共有し。
そして悲しい筈なのに俺を支えてくれている。
もう俺には.....感謝しか無い。
思いながらの翌日。
俺は友人の須山剛弘と話していた。
剛弘とは大学の通っているサークルのメンバーだ。
筋トレしていてムキムキの男で有る。
俺の数少ない.....本当に数少ない友人と言えるかも知れない。
現在、姉妹は疲れて寝ているので俺は外で話していた。
『お前.....凄い事をしたな。女の子の姉妹を引き取るって.....』
「.....その場の成り行きで、な。許せなかったんだ」
『とは言えお前、一人暮らしだろ?無理が有るんじゃ無いか?だって.....狭すぎるだろ部屋が』
「.....確かにな。姉妹にとっては狭いと思う」
その様に話すと数秒、通話が途切れた。
俺は少しだけ眉を顰める。
そして.....剛弘が話してくる。
『でもお前が決めた事なんだ。お前の意見には賛同する。俺はそれなりには協力するぜ。何なら俺の知り合いの先輩にも救済を頼もう』
「お前に迷惑を掛ける訳にはいかないだろ。勉強とか忙しいだろうし」
『アホ。勉強しろ。レポートとか提出しないといけないだろ。馬鹿か』
「確かにだけどな。俺としては.....大学よりも.....」
大学よりも何だ。
と説教じみた声が聞こえた。
俺は見開く。
そして.....剛弘は言葉を発してくる。
『お前、大学は絶対に辞めるなよ。事情は有るかも知れないけど.....な。資格は絶対に取った方が良いと思う。だからそういう事も有るから先輩に協力を求めるって言ってんだよ』
「.....ハァ.....お前.....本当に良い奴だな」
『俺はお前が心配だ。だから協力する。.....心配すんな。重鎮の先輩が居るから』
「.....は?重鎮?」
何だその重鎮ってのは。
思いながら聞くと、まぁ秘密だ。
と言いながら剛弘はクスクス笑った。
それはそうとお前の家に向かっているからな、今。
と言葉を発する、剛弘。
「.....お前、こっち来んのかよ」
『当たり前だ。心配な友人の為なら何処までも行くぜ』
「.....意味が分からん。だが.....有難うな。剛弘」
『.....おう。だから心配有るかも知れんが.....心配すんな。良いか』
本当に.....良い奴だ。
俺がキャンパスに入学してからその直後に声を掛けて来たんだ。
剛弘が、だ。
お前ヒョロヒョロしてんな。
腕をバッキバキのムキムキにしてやろうか的な意味の分からない感じで、で有る。
当初は.....なんだコイツと苦手に思っていたんだが意外に話が合う奴で。
いつの間にか俺に付き纏い、そして友人になったのだ。
小学校時代も中学校時代も高校時代も。
全部イジメを受けていた俺にとっては初めての理解者だったのだ。
「剛弘」
『何だ?』
「.....有難うな。お前に出会えて幸せだよ俺」
『.....ハッハッハ。あとはお前が筋トレすれば完璧だけどな』
意味が分からん。
だが.....本当に.....感謝しか無い。
思っていると玄関が開いた。
そして叶が顔を見せてきてクエスチョンマークを浮かべる。
「兄貴?何しているの?」
眠気まなこを擦っている叶。
何とも可愛い姿だ。
俺はその姿を和かに見ながら電話に言った。
「あ、すまん。剛弘。叶が起きたから.....」
『お?可愛い妹ちゃんがか!楽しみだな!じゃあまた後でな!』
切れた。
それは良いけど.....コイツ自転車に乗ってねぇか?
自転車に乗りながら電話って危ねぇよ。(真似しないでね)
スマホを運転中に弄ったら危ねぇ。
思いながら盛大に溜息を吐いていると。
叶の次に希が顔を出した。
「お兄ちゃん?どうしたの?」
「.....話が有る。お前らに」
「.....え?」
そして俺達は玄関から部屋に入った。
それから.....叶と希に向く。
そうしてから部屋に戻って話し出した。
「.....俺達に協力してくれる人がいてな。そいつがもう直ぐ来る」
「え!?じゃあ着替えないと」
「だね!パジャマじゃ無いけど.....!」
慌てる叶と希。
俺はその姿に苦笑しながら首を振る。
そして笑みを浮かべた。
「.....大丈夫だ。今の姿でも十分可愛らしいからな。それにあいつは.....そういうの気にしないし」
だがツッコミが有った。
服装もそうだが髪型を見ながら、だ。
そして眉を顰めて怒る。
「駄目だよお兄ちゃん」
「お客さんに会う時は髪型とか直すの。それは柚木っちが言ってた」
「.....あ、そうですか」
かなりムッとしていて怖いです.....。
やっぱり女の子の心って今は分からないですね.....。
思いながら.....俺は部屋を後にした。
何故かと言えば.....2人が着替えるので、だ。
☆
「何をしているんだお前は?」
「.....俺は追い出されたんだ」
腕を組んで壁に背をもたれさせていると汗だくのタンクトップの男が来た。
俺より身長が10センチほど違う男だ。
歯並びが良くよく、にかっ、と笑みを浮かべる。
そして日焼けの肌に顔立ちはイケメン。
俺とは正反対だが本当に良い性格の持ち主だ。
「ハッハッハ!もしや風月は女の子の扱いに慣れてないな!?」
「当たり前だろお前。俺は陰キャだぞ」
「俺としてはお前が筋トレすればモテると思っている!それなりには陽キャになれると思っているがな!」
ニカッとしながら親指を立てる、剛弘。
いやいや.....そんな事をしても俺がモテている訳無いだろ.....。
思いながら.....剛弘に向く。
剛弘は、どうした?、という顔をした。
「.....でも来てくれてサンキューな。助かる」
「おう。大丈夫だ」
「.....でもなお前.....暑苦しい」
「.....あ!?何を言うか」
本当に今は夏でも無いのにタンクトップってのもな.....。
考えながら居ると玄関のドアが開いた。
そして叶と希が顔を見せる。
良いよ、お兄.....。
そこまで言って驚愕する2人。
「初めまして!須山剛弘です!宜しくね!希ちゃん!叶ちゃん!」
「.....お、お兄ちゃん.....友達ってこの人?」
「.....迫力が.....」
圧巻されていた。
だが直ぐ叶と希は顔を見合わせてそれから頭を下げる。
そして自己紹介を始めた。
「アタシは五十嵐.....叶です」
「私は五十嵐希です」
「おう!二人共、名前は覚えたぞ。宜しくな!」
ニカッと歯を見せて笑顔を見せる剛弘。
少しだけ2人にドン引きされているんだが.....。
そう思いながらも.....俺は親指で指差した。
この人は役に立つぞ、とだ。
「失礼だな!風月。.....助けに来たのは事実だが!」
「.....分かった分かった。部屋に入るぞ。剛弘。少し肌寒いし」
「俺はそうでも無いが。入ると言うなら入ろう」
「お兄ちゃん。お茶出そうか」
そんな会話をしながら部屋に入る。
そして中央のちゃぶ台付近に俺と剛弘が腰掛けた。
すると手際良く叶がタオルを持って来たりする。
有難う、と言う剛弘。
俺はそれを少しだけ口角を上げながら見た。
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