6、悲しみの共有

叔母さんはあくまで叔母さんだった。

一体どういう意味かと言うと.....飛び出した俺達を心配してない様に見えながらも.....俺達を気に掛けていたのだ。


つまりを言うなら心配してくれていたのだ。

0じゃ無く.....仮にも1の様な感じで、だ。

俺はその事に叔母さんにも皆さんにも感謝しか無かった。


だがその裏で不安に思っていた。

何故なら叔母さん達が通知してきたのだ。

俺の大学費用は一切協力しない、出さないと、だ。

確かにそうだとは思った。


叶ちゃんと希ちゃんの生活費を半分出すというのだから。

それから取り敢えず.....まだ叔母さん達にまた相談をしないといけない。

叶ちゃんと希ちゃんの.....学校用品に関して、だ。

恐らくは否定されるとは思うが.....。


その全ては俺の我が儘で叶ちゃんと希ちゃんを引き取ったのだから、だ。

世の中、そんなに甘く無いと思う。

全てを考えながら.....俺は夕食を作っていく。

時間が遅かったので明日から本格的に動く事にする。


横では希ちゃんが手伝ってくれている。

叶ちゃんは部屋の掃除をしてくれていた。

取り敢えず材料は有ったのでそこから何かを作ろう。


しかしそれでいても不慣れなクソ野郎が作る食事。

俺は今まで焼いた卵、水、ご飯で全てを済ませてきた。

何故そうなのかと言えば俺自身しか居なかったからそれで良かったから、だ。


だけどこれからはそういう訳にはいかない。

何故かと言えば.....彼女達は成長期なのだ。

身長も.....言ってしまえば体全体の何もかもが成長期。

つまりそれなりに配慮しないといけない。


「でもお兄ちゃん.....そんなに無理しないで良いからね。私も叶お姉ちゃんも分かっているからね」


「駄目だ。叔母さんに言われたんだ。食事もしっかりしないと」


「お兄ちゃん」


真剣で血眼になっていた俺は呼ばれて横を向く。

そこには柔和な顔の希ちゃんが居た。

そして笑顔を見せてくる。

俺に対して、だ。

それから手を握ってきた。


「無理はしないで」


すると叶ちゃんがやって来た。

俺に笑みを見せている。

叩きを持って、だ。


「そうだよ。兄貴。私達は分かっているからね。全部」


「お前ら」


叶ちゃんと希ちゃんは顔を見合わせる。

それから.....頷き合ってから俺を見てきた。

そして俺に向いて言葉を発してくる。


「あと、私達は叶、そして希と呼んで下さい。ちゃん付けしなくて良いよ。お兄ちゃん。私達は年下なんだからね」


「.....じゃあ希?叶?」


「はい」


「おう」


俺は少しだけ恥ずかしかった。

だけど2人はそんな事はお構い無しの様に俺に対して満面の笑顔を見せる。

そして左右から手を握ってくる。

俺はその温もり有る手に.....なんか目の前が歪んで見えた.....。


「お兄ちゃん!?」


「兄貴.....!?」


「.....!.....あ、す、すまん.....」


何でか知らないが。

みっとも無く俺は涙を流していた。

まるでその.....ダムの水が陥落した様に、だ。

俺は涙を拭ながら、ご、ごめん、と言う。

何でこんな.....!?


「お兄ちゃん.....悲しい気持ちなんだね」


「.....アタシ達と同じなんだ。あはは」


「.....御免な。みっとも無く泣いてしまって.....本気でごめん.....」


馬鹿野郎だな俺は。

この2人が居るのに、だ。

だがよく見ると2人も泣いていた。

そうしながら.....2人は俺を抱きしめて来る。


同じだよ、私も。

同じ、アタシも。

そう言いながら俺を抱きしめて涙を流す2人。

悲しいんだね、お兄ちゃん(兄貴)と話してくる。


俺は何も言えなかった。

その2人は涙を流している俺の服をギュッと握ってくる。

それから.....嗚咽を漏らした。


「柚木さんにパパに会いたい.....私.....子供だけど.....子供じみているけど.....!」


「そうだね.....希.....会いたいね.....会いたいよ....」


俺も、だな、と答える。

本当に突然だったから何時も通りで別れも何も言えずにそのまま姉さんと武さんは交通事故で逝ってしまった。

だから悲しいんだろう。


叶と希の方がもっと悲しい筈なのに。

2人は.....それでいながらも俺と悲しみを共有してくれた。

号泣する2人に俺は言葉を発する。

それから.....涙を拭った。


「お前ら。本当に有難うな」


「.....うん」


「.....うん.....」


でも思った。

俺が泣くのはもう最後にしたい。

この2人の前で、だ。

俺が.....19歳で年上なのだから。

だから俺は泣く訳にはいかないのだ。


「あと少しで料理、出来るね」


「ああ。でも料理つっても冷凍食品ばかりで御免な」


「全然大丈夫。お兄ちゃん」


そして.....それらの事が有りながらも何とかその日は料理が出来て、それを食べてから少しだけ問題が起こってしまった。

何の問題かと言うと.....風呂の問題で。


そして.....寝床の問題で。

それからトイレ問題。

思春期の女の子と一緒に寝るなんて事は出来ないから、だ。

因みにこのアパートの風呂とトイレは一体型で有る。


「どうしようかお風呂」


「取り敢えずカーテンを張ろう。そしたらどうにかなるんじゃ無いか?」


「うん。そうだね。でも兄貴、身体見ないでね。恥ずいから」


「は、はい」


まだまだ問題が有るな。

かなり山積している。

考えながら.....俺は顎に手を添えた。

そして考える。

すると希が寄って来た。


「でも私はお兄ちゃんと一緒に風呂に入っても良いよ?」


「は.....え!!!!?いや、希さん?それは!?」


「あはは。でも恥ずかしいね。止めときましょう」


「ですね。うん」


当たり前の事ですね。

思いながら.....俺は心臓に手を添えつつ。

それから苦笑した。

全くな、と思いながら、だ。


「あ。兄貴、期待したでしょ?エッチだなぁ」


「からかうなよ。期待して無い。全く.....」


「え?期待してないの?割と本気だったよ?お兄ちゃん」


「.....へ!?」


ふあ!?と赤面する叶。

いや.....え?嘘だろ。

思いながら俺は困惑しながらそう言ってくる希を見た。

これから本当にまた大変な気がするな.....。

そう考えながら溜息を盛大に吐いた。

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