第2章 引き離したく無い

4、俺が姉妹を引き取る

姉さんが死んでしまった。

そして.....その姉さんの再婚相手の武さんまで単独交通事故で亡くなったのだ。

俺は.....ただ無気力で.....葬儀やら何やらを行う中。

棺に縋って号泣している姉妹を見た。


俺は死神だった。

昔から変わってない。

戻って来なければ良かったのだ。


それなのに.....大丈夫だと信じ戻って来て。

簡単に言ってしまえば姉さんと武さんを殺したのも同然だ。

家族の幸せを.....破壊したのは.....俺だ。


ただ.....絶望しか.....無い。

もうどうしたら良いのだろうか俺は。

母親も殺して姉さんも殺して?

生きている価値は有るのか俺には。

その様に思いながら喪服で廊下を歩いていると声が聞こえた。


「それでどうします?田中さん」


「.....親族同士で連れて帰るしか無かろう。叶、希、2人も引き取れないと思うのだ。これから先の.....様々な状況を考えるなら」


「.....ですね。解ってもらうしか無さそうです」


「奈々子。説明はしたな」


数十秒経っての、はい、と返事の声が聞こえる扉を開ける。

リビングで.....ソファに姉妹が腰掛けていた。

様々な親族の方々が居る。

静かに涙を浮かべている姉妹。

俺は?を浮かべて奈々子さんに聞いた。


「.....どうしたんですか?」


「.....ああ。来てくれたのですね。えっとですね.....叶と希のこれからの進むべき道を我々が考えています」


「.....これからの進むべき道?」


「.....姉妹をそれぞれの親族が引き取る事にします」


俺は.....見開いた。

そして姉妹をバッと音がする様に見る。

姉妹は肩を寄せ合っていた。

この状況に納得している様であるが.....。

そんな馬鹿な.....これから引き離されるのか?


「.....叶」


「.....はい」


「希、分かったわね」


「はい.....」


姉妹は諦めた顔で.....それぞれの親族の元に.....。

俺は.....その顔がかなりキツく印象に残った。

そして.....俺は静かに俯く。


「俺に何か手助けは.....」


「.....貴方は大学生ですからね。今は.....勉学をしっかりして下さい」


「.....叔父さん.....」


「.....君に何が出来るというのだね。大学生だが未成年だろう。経済状況も安定していないしな」


未成年という言葉が酷く突き刺さった。

俺は落ち込んで言葉を出さない。

でもちょっと待ってくれ。

この状況、姉さんならどうするんだ、と考えた。


あの笑顔の姉さんの顔で.....涙が浮かぶ。

だけどそんな事は今は良い。

俺に何も出来ない?


『頼んだわよ。叶と希!3日間宜しくね!』


「.....だよな。姉さん。姉さんなら.....きっと.....」


「.....どうしました?風月さん」


叔母さんが、皆さんが首を傾げて俺を見てくる中。

俺は涙を拭って決意した様に顔を上げる。

それから.....叶ちゃんと希ちゃんの手を抱き寄せる様に握った。

そして親族達に宣言する。

大統領が演説する様に、だ。


「だったら俺が育てます。2人を」


「.....は」


「.....は!?」


叶ちゃんと希ちゃんが顔を上げて驚愕する。

そして.....涙をポロポロ流し始めた。

え?という感じで、だ。

俺はそんな2人を見ながら親族の皆さんに宣言する。


「.....俺が.....2人一緒に育てるんで。大丈夫です」


親族の一人が眉を顰めた。

それから.....非難する様な言葉を発する。

俺に向きながら、だ。


「.....君は何か?.....馬鹿なのか?そんなこと出来る訳無いだろう。子供のわがままが貫き通せると思うのか。言っている言葉に気を付けなさい」


「.....俺はマジです。.....2人を離れ離れにしたく無いんで。だったら俺が引き取ります」


「風月さん!!!!!わがままが過ぎます!」


「.....わがままじゃ無いです。俺が納得出来ないんで。申し訳無いですが」


そして俺は叶ちゃんと希ちゃんに行くよ、と促して。

頷いてくれた2人を連れて玄関まで向かう.....のだが。

叔母さん達が俺の手を握って止めた。

叔父さんも叔母さんも思いっきり俺を睨んでくる。

不安な様な、目付きで、だ。


「良い加減にしなさい!出来るわけの無い事を言わないの!!!!!」


「.....じゃあ聞きますけど.....貴方達はこの二人の気持ちを考えた事は有るんですか」


「.....この2人の気持ちは私たちがよく分かっています。だから結論を出したのです!貴方.....良い加減な事を言わないの!!!!!」


「お.....お兄ちゃん」


俺は涙を流す希ちゃんと叶ちゃんの頭に手を添える。

そして笑みを浮かべた。

それから真剣な顔で.....叔母さん達に向く。

頭を下げた。


「.....失礼します」


「待ちなさい!まだ話は終わってないわ!!!!!何を考えているの!!!!!」


「いえ。終わりました。.....だから失礼します」


無理矢理に話を切ってから。

親族達が呆れる中。

俺達は.....そのまま玄関から逃走する様に後にした。

叔母さん、叔父さん達が、絶叫を上げる中、だ。

そしてそのまま逃げる様に電車に乗る。


「.....お兄ちゃん.....」


「兄貴.....」


「.....俺としてはお前らの仲の良さを引き離したく無かった。それだけだ。何か文句が有るなら後で受ける」


「.....あはは.....あはは。お兄ちゃんって.....ね.....滅茶苦茶で最低だよね.....でも嬉しいよね.....叶お姉ちゃん。本当に嬉しいよね.....」


叶ちゃんは号泣していた。

兄貴.....有難う、有難う、と涙を拭って涙を流して言いながら、だ。

さぞかしそれはおかしな感じに見えたかも知れない。

だけど俺のこの道が.....姉さんの記した最後の道標だと思っている。

俺は思いながら.....キャンパスの近くのアパートに戻った。


この先、俺達には相当な無理が来ると思う。

だけど.....乗り越えていける。

そう.....思った。

子供のわがままだろうけど.....俺は叶ちゃんと希ちゃんを引き離したく無かったから、だ。

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