たった一度きりの人生、後悔しないように。(2018/01/26 17:53)

って言われてもねぇ。


そう言うのは大抵、人生でいわゆる成功を掴んだ人たちだ。

年末年始は特にあちこちから聞こえてきた気がする。

まぁ、テレビや雑誌などでそういった発言を出来るのは、ある程度成功を掴んだ人たちなんだろうけど、そういう人たちにそんなことを言われても、はっきりと言ってピンとこないわけだ。


彼らの言う「後悔のない人生」というのは、「好きな事、やりたい事をやれ」と同義だろう。


自分は成功した――今の状態で少なからず飯が食えている――からこそそんなことが言えるんだろうけど、誰もかれもが好きな事を選んで生きられるわけじゃないと思うんだ。

その内容に大なり小なりあれど、好きな事を選んで失敗した場合、大抵の場合はリスクが伴うし、もし失敗した場合、安定した道を選んだときよりもひどいことになることが多いだろう。


夢を追うことが悪いことだとは言わない。

だけど、リスクとリターンをしっかりと理解したうえで、自己責任で好きな事に挑戦するかしないかは選ぶべきだし、成功者が無責任に「たった一度きりの人生、後悔しないように」なんて軽々しく言うべきじゃないと、いまのところ大きな成功も失敗も選ばなかったいち庶民としては思うわけだ。まぁ、投資と一緒だね。


僕にだって子供のころには夢があった。

だが、中学、高校、大学、社会人と将来を選ぶ転機においてはリスクをとらずに生きてきた。必ずしも好きな事、やりたい事を選んできたわけじゃない。

消えてしまった可能性に思いを巡らせば、まったく後悔がないといえばウソになるだろう。だが、だからといって見知らぬ誰かにその選択を否定されたり、悔いのないように生きろなんて諭されるいわれはないはずだ。




ちなみにこれと似たような言葉で、「後悔は一生、勇気は一瞬」という言葉がある。

主に恋愛における告白なんかで頻繁に使われる言葉だろう。

告白する勇気は一瞬だが、告白しなかった後悔は一生残るみたいな使われ方をすることが多いのだが、これにも僕は納得できない。


告白することが正義みたいな前提だが、告白することで失敗し、深く傷つき、後悔することもあるだろう。

だとすれば、告白しないこともまたひとつの選択肢だ。これもリスクとリターンを考慮したうえで自分で決断し、選択するべきなのだ。


好きな事をするにしろしないにしろ、告白するにしろしないにしろ、その選択を自分で選んだのなら、そのことでもし後悔することになったとしても、それについて周りの人間がとやかく言うことではないのだ。


一番悲しいのは、その選択する機会さえ与えられないことだと僕は思う。

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