あかほりさとるの偉大さ。サクラは散る。

ゲームの新サクラ大戦をプレイしている。


実はかくいう私もサクラ大戦Ⅴ以来、続編を期待していた往年のファンの一人である。

しかし、Ⅴから5年経ち、10年経ち、広井王子がよくわからないアイドルとのスキャンダルなどを撮られたりしているうちに、いつしか期待は諦めに変わり、僕の心はサクラ大戦から離れていったのだった。



すでに心が離れてしまった僕は新作がでることは知っていてもさほど興味を示すことはなかった。発売が決定した当初はブリーチの久保帯人がキャラデザだとか、真宮寺さくらっぽい敵キャラとかで話題にはなっていたのは知っていたが、その程度の知識だけであった。

それが、ふとお盆休みにそういえばサクラ大戦の新作アニメもやってたはずなのに全然話題になってねぇなぁなどと思い出し、心が離れたとはいえ我が青春時代の一端を担ったゲームの続編ということでやはり興味は持っており、とりあえずなんの下調べもなくダウンロードした次第である。



私ももはやおっさんであり、いわゆるギャルゲーに手を出すのもいささか憚られたのだが、今はダウンロード購入という素晴らしい機能があるのでそれを活かすことにした。

初代サクラ大戦が発売された当時、僕は思春期まっさかりだったのだが、ギャルゲーを買うということは何か重大な過ちでも犯すかのような背徳的で大がかりな出来事だったわけで、人目を気にしてドキドキしながらゲームショップに買いに走ったものだ。などと感傷に浸りつつゲームを始めたのだった。



今のところ、中盤?(全体の長さを分かっていないので本当に中盤なのか定かではないが)までプレーしたのだが、はっきり言って進めるのが辛くなってきている。


戦闘パートがターン制のシュミレーションでなくなりアクションになったとか、3DCGになったとか、多少のシステムの変更については時代の変化だから仕方がないとしても、一番つらいのはなんせシナリオである。


最初はほんの小さな違和感だったのだが、積み重なったあげく、ある展開でどうしても理解できなくなってしまうのである。

街を守ると言いながら敵陣真っただ中でライバルとはいえ仲間同士で急に殴り合いを始める意味が分からないし、それまでに何の伏線や前置きもなく突然10年前の真実の暴露をされたところでこちらは「はぁ……」という感じでしかない。

キャラクターの心情と行動に整合性がなく感情移入出来ないどころか見ていてイライラしてしまうのだ。


さすがの僕も「新サクラ大戦 評価」で検索してみると、サジェストで出てくるのは「シナリオ 酷い」や「つまらない 酷評」といったものばかりだった。


サクラ大戦といえば過去のシリーズでも割とベタ中のベタな展開で見ているこっちが恥ずかしくなるような展開を繰り広げるのだが、それでもきちんと盛り上がるところでは心が震えるような感動を与えてくれるのは、ベタをきちんと王道として昇華していたからだろう。


王道を王道たらしめているのは、違和感のないシナリオ展開と人物たちにきちんと共感出来る下地があってこそであり、それこそがあかほりさとるの手腕であり偉大さだったのだと今になって気付かされた次第である。



今回、新サクラ大戦をプレイしてみてあらためて、あかほりさとるのシナリオの偉大さと田中公平の音楽の素晴らしさ、そして松原秀典のデザインの美しさ(私は藤島康介ではなく松原秀典派だ)を思い知ったわけだ。


サクラ大戦Ⅴから15年。記憶の中のサクラは満開そのままに、待ちに待って実際に花開いたサクラは散り際の美しさもなく僕の心から散っていこうとしている。


しかしながら、いつかまたこの夢の続きを見たいと心から願っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る