人を好きになるということ。
高校生の僕は恋をしていた。
それはほとんど一目惚れだったかもしれない。
彼女の名前は”ナツキ”。夏の希望と書いて夏希だ。
彼女は黒いショートの髪を頭の中心の少し左から左右に分け、意思の強い目と鼻、それを中和するような少し丸みを帯びた輪郭をしていた。
僕はどこにでもいる普通の高校生。対して彼女はとても頭が良かった。
特に数学は全国でもトップ5に入るほどの成績で教師からの信頼は厚く、かといってそれを威張る様子もない奥ゆかしい性格は誰からも好かれるような人物だった。
そんな僕と彼女の唯一とも言える共通点はエヴァが好きということだった。
いつか彼女がそんなことを話していたのを僕は耳にしていた。
勉強だけのマジメ人間ではなく、アニメにも興味を持っている。たったそれだけのことで僕は彼女を増々好きになっていった。
それと同時に僕は焦燥感に駆られるようになっていく。
彼女を他の男子が放っておくはずがない。明日にでも別の誰かと付き合い始めてしまうんじゃないか。そんな心配をするようになった。
それは僕にとってとても耐えられないことで、口下手で女の子とまともに会話すら出来ない僕に彼女へアプローチをする行動力を与えるほどだった。
それから僕にとっては必死のアピールが始まった。
しかし、彼女の気を引こうと色々な話題を考え、なんとか話しかけてみるものの、その作戦はまったくといっていいほど効果は出なかった。
結局、ことごとく失敗に終わった彼女へのアプローチは僕自身の魅力の無さを気付かされるだけとなり、焦燥感は次第に虚しさへと変わっていったが、それでも彼女を好きなことに変わりはなく、それが余計に僕を苦しめていった。
セカンドインパクトが起きたのはそんな時だった。
気付くと僕は崩壊した街の堤防を歩いていた。
ビルは崩れ洪水が家を飲み込み、人は散り散りになってしまった。
夏希がどこへ行ってしまったのか僕には分からず、分かる術もなかった。
全てが終わった世界はやけに空が晴れ、青く澄み渡っていて、最後に見た風景はまるでアニメの一枚絵の様だった。
そんな夢を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます