世界がまだまっ平らだったころ。(2015/05/08 10:49)

 今からウン年前、僕はまだ大学生だった。


 希望の大学に進めなかった僕は学びたいことも、やりたいこともなく、何の目的意識もなく漠然と日々を消費する、どこにでもいる健全な大学生だった。


 時間だけは無駄にあり、バイトばかりしていた気がする。

 バイトも好きでやっていたわけでなく、慢性的に人手不足の仕事だったので、人の良い僕は言われるがままに働いていたのだ。

 たしか多い月で150時間は働いていたし、今思えばからこのころから社畜としての片鱗を見せていたのかもしれない。


 当然、その対価としてアルバイト代も貰っていたのだが、

 やりたいこともやるべきこともない学生は、月150時間のアルバイトをしても時間は十分に有り余っていたので、そのほとんどがパチンコに消えていった。


 今はもう行っていないのでよく知らないが、当時はギャンブル性の高い機種が多く、一時間で二万消えていくことはザラ。

 いつも給料日前は極貧サラリーマンのように、あと何日を何円で――なんてことを考えていた。


 金はないのに時間があるときは家でゲームか読書。

 当時は村上春樹をむさぼり読んでいたのを思い出して少し恥ずかしい。今だって好きだが、もうちょっと読書の幅を広げていれば今はまたもう少し違っていたのかもしれない。




 GWも終わりを告げ晴れ渡る空を見ていると、ふとそんな昔のことを思い出した。

 まるで夢だったかのように今の生活からは想像できない日々。

 何も生み出さない社会にとって何の価値もない日々。


 しかしそれでも楽しかったのはまだ若く、モラトリアムが許されたからなのか何も考えていなかっただけなのか。



 とにかく当時、僕の世界はまだまっ平らだったのだ。


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