複雑な想い
最初にやって来たのは、男子高校生だ。背は小柄で、学ランを着ている。少年は店内に入ってくるなり、きょろきょろ辺りを見回している。マスターが案内をすると、私と同じようにカウンターに座った。メニューを受け取り少年が頼んだものはミックスジュースだ。
「ここはどこですか?僕、手首を切って途中から意識がなくなって・・・。気づいたらここにいて。」
少年も私と同じような疑問を持ち、それに対しマスターが返す言葉も同じだ。ジュースを飲み終わると、少年はさっきよりも落ち着いていた。
「それでは、お名前をお聞きしましょうか。」
「
「有馬君、君が死のうと思った理由を教えてくれますか?」
少年は、コクリと頷き、時々言葉に詰まりながらも話し出した。
「僕は、男の子に恋をしてしまったんです。男子校に通っているんですけど・・・、最初はその子のこと仲の良い友達だと思っていたんです。僕、元から精神的に弱いところがあって、ちょっとしんどくなった時に、その子の後ろから抱きついちゃて・・・。そうしてると気持ちが落ち着くし、その子も優しいから何にも言わずに受け入れてくれるから、それに甘えちゃって。」
時折、おかわりでもらったジュースを口にしながら、話を続ける。
「そんなこと続けてたら、周りの子達からお前はゲイだ、ホモだって言われ出して、気持ち悪がられて・・・。自分では全くそんなことないって思ってたはずなのに、段々とその子のことしか考えられなくて、気付いたら自分でも好きってことがわかるようになって。そんな中でも、その子だけは僕に変わらず接してくれるから、それが逆に辛くなって。男が男を好きになるなんて間違ってて、絶対に叶わない恋だし。
だから、だから・・・、そんな人間はこの世にいない方がいいんだって思ったんです。」
話の最後の方に待ってくると、辛い気持ちが甦ってきたのか、泣きながら話していた。
同性愛か。私には、到底無縁の話と思っていた。しかし、実際に今、目の前にはそれで苦しんだ人がいる
。
マスターは少年が泣き終わるのをそっと待って、優しく声をかけた。
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