叩き込む拳は堅氷に阻まれる。
振り絞った最後の一撃もむなしく、彼の創り出す氷壁が受け止めていた。その堅牢で凍てつく
「やれやれ……」と【白氷の冴え】はため息を漏らせば――
振り返ると同時に彼はその
「うぐおおおおお!」と痛みに叫ぶドラコ。
痛みに気を取られている隙に、【白氷の冴え】の握る兇刃はその胸を穿つのだった。
骨身に染みる冷たさは、体の中、心臓から脊椎と通り尾てい骨まで到達していた。
「ドラコ!!」とジャレの叫び、慌ただしい声は遠くから聞えてくるようだった。
とても遠くから――
すると、この耳元で奴は、【白氷の冴え】が囁いてくる。
「人の厚意は無下にしてはいけないと、そう言っただろ?」
「……うる、せ、ェ……」
突き入れる刃はより深く入る。
大量の血が口から溢れ出る。
「その両目、【竜のひとみ】を久しく見たが、あの時と変わらず、醜い目だな?」
でも、〝さようなら〟だ。【竜眼】のドラコくん?
胸を穿った刃は抜かれ、支えていたその手はこの身体を押し倒す。ゆっくりと、優しく……
気付くと泥土の上、仰向けにして倒れていた。一指たりとも動けない、指先はまるで氷のように冷たくて、それは指先だけじゃない、身体中が凍てついていた。
眠気が来る。視界はゆっくりと暗転し、耳が――遠のいてゆく。
ジャレの怒号はもう、ちいさくとしか聞こえない。
「……哀れな終わりだな?【竜眼】」と最期の言葉を残す【焔の魔人】
「……」【暴風の巨人】はただ彼の死を見つめるだけだった。
血の気の引いてゆくその肌色、見開いたままの目、その生気のない虚ろな瞳。
復讐も果たすことの出来なかった――哀れな骸――をこの記憶に留める様にじっと、見つめていた……
武術族――【竜眼】のドラコは戦地にて、栄誉の戦死――
これがプロローグの終りだ。
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