第1章――〝始祖の物語り〟

始祖の物語り。それは語り継がれてきた物語り。

 現代となっては人々はこれを「ただのお伽話しだ」と口を揃えて言う。

 しかし、この物語は紛れもないこの世界を創造した〝神〟の話しだ。

「神」と言うワードは少々人に誇張させてもしまうが、だからと言って「お伽話しだ」と一蹴してはならない。

「おとぎ話に思えるそれも、必ず歴史的な事実背景をうつしているものだ」

 ジャレは俺によくそう言って叱られたな……


〝始祖の物語り〟

 始まりは暗澹たる混沌が世界を覆いかぶさっていた時代のことだ。

 世界に蔓延した不治の病はつぎつぎに、人から人へ、町から街へ、国から国へと食らい潰していた時代だった。

 満天の星がかがやく夜空に、突如としてして現れたるは、暗き穴。

 ぽっかりと開いた暗き穴より我らが〝神〟は現れた。


 火よりも朱き鱗を身に纏い、空を覆う翼に、その瞳はトカゲのように鋭く、琥珀宝石の様に煌めく。

 我らが神は〝竜〟だった。


 しかしこの竜、神として降臨したのではない。この竜は〝邪竜〟にして、あらゆる世界を炎で呑み尽くし、遂にぞここに辿り着いたと言うわけだ。

 しかしこの竜は呆気あっけに取られた。


「世界は――滅んでいるだと?」


 世界中を飛び回れど、人々は病に倒れ、街は、王城は、国は、滅んでいた。

 すると――


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