地平線までつづく黒き沼地にて

 枝木の杖を突きながら、身体を引きずるようによたよたと歩く老婆を見つけた。

 竜はすぐ様に急降下、老婆の行く手に落ちればそれは隕石の如し。

 しかし老婆は逃げ出すこも、慌てることもなくただゆっくりと足を止めた。

「おやおや、これは初めて見る大きなトカゲだこと」

 陽気な声。老婆と思っていた竜だったが、その者はか弱い〝少女〟であった。

 その肌はささくれが酷く、所どころには赤紫色の腫れものが出来ている。左眼も皮膚はただれて、眼球は腐り落ちたのか、そこは空っぽな空洞がみえた。

「言え。この世界はなにが起きた?」

 竜が尋ねると、この少女は陽気な声で答えた。

「世界は〝死にました〟」

 竜はまた尋ねた。

「貴様はここで何をしている?」

「はは。これは簡単なことです。私も終わるものですから、せめてもの願いとして、世界一の山の頂きで眠りたいのです」

 竜は辺りを見回すが、この世界に山なぞ何処にもない。

 と竜が言えば、この少女は笑った。

「知っていますとも。だから、貴方を待っていたのです」

 と少女は笑った。

「待っていた?だと?」竜は困惑していた。

「はい。私は〝賢者アル〟にして予言を言い渡す子。トカゲ……いいえ、竜様、あなたが私の元へ来るのを待っていたのです」

 賢者アルは竜へと予言を伝える。


『あなた様がこの世界を創造を為されるのです』

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