「彼らは〝贄〟となったのだから…」

 と言う彼の口調、その声調はとても冷たく感じた。

 冷酷で、残虐無慈悲さが声のひとつひつに明確に垣間見せた気がした。

「なんだと!?贄だと?」

「そう。我らが祖にして竜人様、主導者アル様への贖罪しょくざいの為に。そして、僕たちの繁栄の為に。ね?」

「ふざけ……ッ!!?」

 刃を受け止めていたこの氷壁の表面、微かに蠢いたような気がした。怪訝に眉をひそめた、まさにその隙を突くが如くそれは一瞬に飛び出した。


〝尖鋭なつらら〟だ。


「ぐッ!?」

「ドラコっ!!」と心配したジャレの声が聞こえる。

 紙一重。心臓への直撃は裂けたものの無数と跳びだした氷柱の一本が、この左肩に深く突き刺さっていた。

「クッ!」引き抜こうと氷柱を掴むが、激痛にみまわれる。『引き抜けない!?』

 突き刺さった氷柱はまるで釣り針のかえしが付いているかのようで、引き抜こうにも引き抜けないのだ。

「その氷柱は魔法による創造物。ならばその氷柱は氷柱である限り〝生きた魔法〟だと言える」

「なんだと?」

「分からないのかい?今もまだ氷柱は君の身体に浸食しているのだとね?」

「なッ!?」

 左肩に食いこんだ氷柱に目を向ける。

 氷柱は確かに溶けることなく、むしろ凍りは徐々に広がっていた。着実に、そして確実に――

「おまえッ!!」

「さぁ、どうする?そのままじっとしていても死が待ち、向かって来ても死が待っているが?」

「ならッ!お前を倒せば〝魔法は消える!〟そうだろ!?」

 雄叫ぶように言い放ち、ドラコは駆けだす。

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