柔らかなその唇に人差し指を添えて――
「僕の口は堅いものさ。そう、まさに堅氷と同じでね?」と彼は言う。
まったく信用ならないな。
これを思ったのは彼以外の〝誰もが〟である。
「それはすこしばかり失礼じゃないかい?ましてや君たちまでとは!」とわざとらしく驚く様子のこのケビル。
「ケビルは誰彼すぐに話すもの……」と冷たい態度で【暴風の巨人】は返していた。
「ちっ!ふざけやがるのも大概にしてろ!」
怒りに任せて駆けだすドラコ。
それに反射的に即座と動くは【暴風の巨人】と【白氷の冴え】だ。
【暴風の巨人】が迎撃にと義手の右腕を振るえば、風刃を撃ち放った。
が、それで彼の進撃が止まることはなく、彼はスピードを緩めることなく真っすぐと突き進む。向かってくる風刃はこの【剣型・エレメンタル・ウェポン】でたたき斬ってだ。
エレメンタル・ウェポンは魔法を吸収する性質をもつ。
叩き斬った瞬間からその刀身には風が纏う。
「おおおおっ!!」
勇ましい雄叫び上げながら、高く宙へ跳び上がる【竜眼】のドラコ。振り上げた刃はそのまま奴の脳天目掛けて振り下ろした。
「やれやれ……」
その口から深いため息が漏れたのを聞いた。つぎの瞬間、彼との間に聳え立つ、それは堅氷な壁だ。
刃が堅氷な氷面に振り下ろされた瞬間、刃に纏っていた風は弾けるように吹き荒み、家々の外壁に抉るような傷痕をのこし、窓をつき破る。
が、この氷だけは〝無傷〟だった。
「どうやら『交渉は決裂した。』で、いいのかい?命は無駄にすべきではないよ?」
「黙れッ!お前らだって、俺たち同胞を捕虜として連れて行くくせして……俺たちの仲間は何処だ!アイツらを還せ!」
「それはできない」きっぱりと言い張る【白氷の冴え】
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