「ドラコ!止せと言っているんだッ!」

 これはもはや説得ではない、〝警告〟だ。

 【老牙】ジャレ、彼の真っ直ぐな眼差しをみれば、それは一瞬すらも要らずに理解ができた。

 しかし、ドラコは――「ジャレはベンを連れて早くここから撤退しててくれ。俺は……必ず後から追いつくからさ」

「〝死体〟となってか?」とジャレの厳しい口調に厳しい言葉が聞こえてくる。

 彼は分かっていた。

 ドラコは差し違えてでも、固執することを。


 〝復讐〟だけに――


 ジャレの言葉に賞賛の拍手を添えるのは、その白服を纏った男だった。

 彼は物腰の柔らかい声で言う。「流石は、【老牙】の異名にたがわぬ明晰力と判断力だ」

 そして続けざま、ドラコにこう提案する。

「どうだい?この場は〝取引〟と行かないか?」

「取引……だと?」

「そう……」

 彼はじっと見ていた。

 彼が握りしめる剣、その刀身に風を纏わせている剣を――

「その剣……〝赤灰石〟を使っているのだろう?」

「それがどうした?」

「〝赤灰石〟は僕たち魔法族にとって神聖なモノだ。それを君たちのような不敬なやからが使役し、その力の祝福を受けていいものではない……」淡々と言葉を発するが、威圧さもあった。

「そこでだ。君たちの所有するすべての赤灰石を私達に返還すれば、この場は見逃そうじゃないか」


「おい!冗談じゃねぇぞ!!!」


 反抗に声を荒げるのは【焔の魔人】カフラ。彼女だった。

 尋問するが如く彼に詰め寄っていた。

「一体誰の権限でそんな事が許されてる!?アイツらは、私達の聖域を侵してんだぞ!?」

「それは万も承知のことだ」

「なら!……っ!?」

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