降りそそぐ雨粒よりもゆっくりと。

〝ふわり〟と言う擬音語が似合うほど【暴風の巨人】は〝ふわり〟と夜空から翡翠色の風に乗って降りくる。

 そして――〝もうひとり〟――そこの民家の角からちらりと〝白い人影〟が出るのを見やるなり、ドラコは駆け出す。


「ドラコ!止せッ!!」

 

 制止の声も無意味に、すでにドラコの背は小さかった。

 彼の瞳はすでにその男しか見ていなかった。

 なぜならその白い影の男こそ――『家族のカタキ!!』――なのだから。


 宙高く跳び上がり、落ちる勢いをも利用してこの振り上げた剣をたたき落とす。

 悠長に呆けた顔こちらを見る奴の脳天目掛けて――


「……」

 あまりの凄まじさ。とその肉体的な速さに、魔法族の誰も反応できていない。

 その白い男もただドラコの振り落す剣を見ているだけ。

 ドラコは勝利を確信したが――


 足元でそよ風のような微かな風の流れを感じとる。

「!!?」

 刹那――それは打ち上げる暴風となり、ドラコの身体を弄び、より高い宙へと放りだした。


 風を生んだのは【暴風の巨人】だ。


「……」

 彼女は体勢の整っていない彼の背に向けて、素振りした腕から鋭さのある風の衝撃波をひとつ放った。


 が、彼はそれを見ていたのか、いまだ体勢の整っていない状態だと言うのに、彼は向かってくる風の衝撃波をたたき斬った。

 着地するドラコ。を狙って怒号が飛ぶ。

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