「そこに居たか!〝ドラコっ!!!〟」

 と張り上げた大声でこちらを呼ぶ声にふり返る。そこにはこちらに向かって駆ける【老牙】ジャレの姿があった。

「ジャレ!?どうしたんだ?そんなに慌て……」

「話しは後でいい!そんな事よりもはやく、ベンを連れて早くここから撤退するぞ!?」

「どうしたって言うんだ?」

 焦燥を思わせる彼の様子を疑問に思うドラコ、眉をひそめ、彼の様子をじっと観察すると気付く。彼が右腕に〝大けが〟を負っていのを。


 その傷を目にしてからと言うもの、ドラコ、彼の目付きが変わる。


「ジャレ……その傷…〝誰〟に負わされた?」

「そんな事はどうだっていい!今はここから退くのが先決だ!」

 ドラコはすでに分かっていた。彼が焦る理由が。


 そう。――〝奴が〟来たんだ。と――


 ジャレの右腕はその軍服は無残にもボロボロに破かれ、皮膚にはひどい火傷のような傷が、血は止めどなく流れては赤く腕を染めている。

 が、それは火傷なんかじゃない。〝凍傷〟だ。

 それも重度の…


「ドラコなにをしている早――っ!!」


 ジャレの声をかき消すほどの轟音、後方の建ち並ぶ民家の一角を吹き飛ばす〝熱線〟

 現れたのは――

「おっ!居た居た!」標的を発見しては、無邪気に笑む【焔の魔人】。

 まるで、道具箱のなかからお気に入りの玩具でも見つけたみたいに。

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