そこへ覆いかぶさる人影が。

 火球の進行方向に突如として姿を現したのは、ひとりの巨漢。

 その背中はひろくて大きく、それに――とっても温和さを感じる。

 よく知る背中だった。


 矢面に威風堂々と立ち構え、迫る攻撃のすべてをその大剣にて受け止め、仲間を守る。


 なにより頼もしい背中だ。

「ドラコさん!」

「ベンっ!お前…無事だったんだな!?」

「ええ、なんとか…ギリギリですけど」

「ちッ!【盾】の腰抜け野郎が……出しゃばりやがって!」

「…っ!うらぁああ!」

 火球を受け止めた彼の大剣型エレメンタル・ウェポンの刀身には炎が灯っていた。

 大剣を振るえば纏っていた炎は轟轟と烈しく放たれ襲い来る。その熱と光に視界は奪われ、つき破った天井は崩落する。

「くそ!逃げんじゃ…ねぇよッ‼」

 迫る粉塵のさなかに怒号を張り上げていたが、すべては呑み込まれ、彼らには届かない。


 すでにこの場から去った彼らには……


 それが数分前のことだ。

「ううっ!」

 降りそそぐ雨が彼の抑える傷口から血をながし、洗い流された血は彼の足元に血だまりを作る。

「ベン!やっぱりお前、傷口が開いて……」

「大丈夫っスよ…」気遣い無用と笑みを浮かべるが、誤魔化せていない。

「これくらいでへこたれるようじゃ……兵士の恥じ、でしょ?うぅぐッ!!!」

 ズキズキと開いた傷口から蝕む痛みに耐える事なぞできず、立つにも立てない状態だった。

「馬鹿言うな!お前はここで休んでろ」

「ドラコさんは、どこへ?」

「俺とジャレで時間を稼ぐから、お前はその間にこの先にある駐屯地まで辿りつけ。泥まみれになろうが、這いつくばてだろうがな?お前が生きてりゃ、それだけで勲章ものだぜ」

「そんな……ダメっスよ!俺も……うッ!!!」

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